第223話 三乗の操作と謎


 ハーゲンの死闘が幕を閉じた。余裕の勝利かと思えたが、意外にも薄氷の上での勝利だったらしい。今はハーゲンにはゆっくり休んでもらっている。


 それにしても、ハーゲンの強者と戦いたいという願いは叶ったのだろうか。充分な敵のように思えたんだが、まだまだ戦い足りないというなら、また用意してやろう。


 また、俺もこの死闘を通して色々思うところがあったな。もっと強くなりたいし、まだまだ、上に行ける気がしてきた。


 よし、まずは帰らずの塔をチャチャっとクリアしますか。なんだかんだあそこにずっと拘束されているからな。仙人関係のクエストもその影響で全く進んでいないし、塔のクリアが今の最優先事項だろう。


 そうして俺は再び塔に侵入した。ハーゲンが休息中であるから、久しぶりに足で移動したのだが、たまには良いもんだな。速度的にはあまり変わらないのだが、足を動かす分、こっちの方が楽しくてスッキリするな。


 ただ、これを毎回やれと言われると流石にしんどい。こういうのはたまにやるから良いのだ。


 帰らずの塔の中は、前回次の階層にいってそのまま死んだため、ほぼ初見のようなものだ。俺は立方体の上にいて、周りに同じサイズの立方体がいくつも浮いている。


 何か幾何学的な空間で、俺の中の少年心がくすぐられるのは感じられるのだが、いかんせん、幾何学的過ぎて何をすれば良いのかわからない。


 どうやら俺は少年心をいつの間にか、失ってしまっていたらしいな。


 どうすればいいか分からず、とりあえず一歩を踏み出してみて、魔法陣から出てみると、


「うぉっ」


 急に俺が乗っていた立方体が前方に動き出したのだ。しかも、俺の乗っている立方体が動いただけでなく、周りの立方体も一斉に動いたのだ。あまりにも急すぎてバランスを崩しそうになったが、なんとか持ち堪えることが出来た。


 そして、辺りを見渡すと先ほどとは似ているが違う光景が広がっていた。周りの立方体が近づいていたのだ。一瞬気のせいかとも思ったが、明らかに近づいている。


 試しに一歩後ろに下がると、立方体も後ろに動き、周りのものも含め最初の位置に戻った。


 なるほど、これで大体仕組みも分かったぞ。俺が前に進めば、俺が乗っている立方体も進み、右に動けば右に進む。つまり、俺の動きに連動しているのだ。何度も試したから間違い無い。


 これで立方体を操作して、この空間から抜け出すのが目標なのか。急にパズル的な要素だな、これはうまいことしない限りは進めないってことか? 頭脳を使うのは苦手だから勘弁してほしいんだが。まあ、これをクリアしないと進めないからな。とりあえず適当にやるか。


 そう思い、気まぐれに左右に曲がりながら、ひたすらに前進していると、


 ガシャン!


 周りに浮かんでいた立方体の一つに激突した。そして、その立方体の上には、ワニ人間と表せば良いのか、そんなモンスターが立っていた。


 あまりにも短い間で情報量が多すぎたため困惑していると、そのワニ人間が急に俺に向かって襲いかかって来た。俺は無意識の内に剣を取り出し、真っ二つに切り裂いていた。


 どうやら、しっかり俺のために戦闘要素を盛り込んでくれているようだな。


 再び立方体を動かそうとすると、左右には動かず、前進も出来ずにただ後退することしか出来なかった。一旦下がるとまた、左右に行けるようになったが、特に何かが起こりそうな感じはしない。


「あっ」


 分かったぞ! これは恐らく、相手を倒したらその立方体に移動して、そこからまた操作して進んでいくんだな。


 なるほど、この階層の攻略方法が分かったぞ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る