第222話 突破口
俺の必要性については一旦置いておこう。俺が主人なんだしとやかく考えることでもないだろう。自分よりも優秀な部下を持っているトップの人なんて、それこそ数え切れないほど沢山いるだろう。
この世は適材適所なんだよ。だから人それぞれ役に立つ場所、輝ける場所が違うからな。これで良いんだ。
って、俺はなんでこんな必死になって言い訳しているんだ? やっぱり引目を感じてるってことなんだろうな。
よし、一旦俺の話は置いておこう。それより今はハーゲンの戦い方に注目する時だ。幸い、分割思考のおかげで戦いそのものについては認識できている。
俺がつまらぬことを考えてる時に起きたことは、クラクラしていたオーガに対して一報的に噛み付いたり、魔法を放ったり、引っ掻きをしたり等、様々な方法で攻撃していた。
オーガが目を覚ました。ハーゲンはかなり攻撃していたのだが、それでもあまり有効打にはなっていない様子だった。あの巨体通りの体力の多さとタフネスさを持っているのだろうな。
これはハーゲンにとってはかなり厳しい戦いになるかもな。今までは格下を一方的に虐殺していたが、今回のように圧倒的な強者、同等かそれ以上の敵と戦う機会が少なかったのだ。
そのため、殲滅目的ではない、強大な敵を倒す為の攻撃というものを知らない、または使えない可能性がある。これをきっかけに目覚めてくれたら良いのだが。
かくいう俺はあるのだろうか? あっ、不動之刀からバフを積みまくって攻撃すれば良いのか。これがあったな。でも、これで敵が死ななかったらどうするんだろうか、さらに待って刀を放つとかだろうか。
まあ、なんにせよ、俺の手札が全て効かない時のことも考えておかないとな。本当の最後の切り札というか、隠し技というか、そのようなものがあるだけで戦闘への余裕も変わってくるだろうからな。
ハーゲンの戦いは膠着状態に陥っているようだ。最初のように睨めっこをしているわけではなく、単にお互いの攻撃が有効打足りえてないのだ。
オーガの攻撃は鈍くて当たらず、ハーゲンの攻撃は威力不足だ。攻撃を当てられている分、ハーゲンの方が有利に見えるが、スーパーアーマーのようなスキルがあれば効いてないことになるし、現にまるで効いていないようなのだ。
んー、このまま続くようなら俺も暇だし、強制的に終わらせても良いんだが、まあ、もう少しだけ様子を見てみることにしよう。
すると、ハーゲンの様子が少しだが変化した。攻撃回数が減り、回避に専念するようになったのだ。更に、明らかな攻撃チャンスにも関わらず、攻撃しない事もあった。
もう、バテたのかと思っていると、ある瞬間突然、ハーゲンが攻撃に繰り出したのだ。
グゥアアアア!!
しかも、それがオーガに対しての初めての有効打になったのだ。
俺は驚いた。一瞬何が起きているのか全く分からなかったが、注意深く観察してみると、どうやらハーゲンが自らの黒雷を身に纏っているようだった。
そうすることで、自身の身体能力が飛躍的にアップし、更に攻撃時には、そのブラックサンダーの威力も上乗せされているため、驚くべき火力が生み出され、初めてオーガにまともなダメージを与えたのだろう。
そこからはあっという間だった。ハーゲンがオーガを圧倒し、すぐに決着がついてしまった。もともと攻撃は当てることが出来ていたからな、威力の問題が解決されたらそりゃこうなるだろ、っていう展開だったな。
そうしてオーガモナークは討伐された。残りの残党兵のオーガは俺がチャチャっと処理しておいた、また集落を作られると面倒くさいからな。仕方ないことだ。
これで一件落着だな。一通りやることが終わって、ハーゲンを労おうとハーゲンの元に行くと、そこにはボロボロになったハーゲンの姿があった。
『おい! 大丈夫かハーゲン、どうしてこんな事になったんだ? 敵の攻撃は食らっていないはずだろ?』
『ご、ご主人様、申し訳ないっす。最後、俺っちの魔法を俺っち自身に使った時、結構体に反動が来てたっぽいっす。かなりしんどいっす……』
勝負に勝ったはずのハーゲンが落ち込んでいた。まあ、確かにそうか。電気を使って無理やり体のリミッターを外して、アドレナリンの赴くままに攻撃してたら、そうなるよな。こればっかりは仕方ない、これも一つの経験だな。
『そうか、でも、よく頑張ったぞ、よく倒したな。正直、今のハーゲンでは倒せないかと思っていたぞ。でも、良く思いついたな。後は、使うタイミングと時間さえ間違えなければ強力な武器となるだろう。まあ、とりあえずお疲れ様、一旦休め』
「【メガヒール】』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます