第216話 委員会


 次の階層はというと、そこは立方体の世界だった。俺自身は三メートル四方の立方体の上に立っていた。この立方体はどうやら浮いているようで、見渡す限り、沢山の同じサイズの立方体がある。


 因みにハーゲンはこの場にはいない。転移した先がどうなるか分からないからな。もしもの時を考慮するとこうするのが正解だろう。とは言っても先程はハーゲンがいち早くゴールしたため、そのまま転移したのだが、まあ、細かい事は気にしないに尽きるな。


 ところでこの空間はどんな仕組みがあるのだろうか。空中に浮かぶ立方体、うん謎だな。とりあえず死んで装備を作りに行こうと思う。どうやって死ぬかは悩ましいところではあるが、そうだな、ちょっと一旦ここから飛び降りてみるか。何処に繋がっていようと高い所から落ちたら死ねるだろうしな。


「ふっ」


 気合を入れて飛び降りたのは良いが、俺は天駆を持っているからいつでも空中で止まれるし、なんならハーゲン呼べば戻ることだって一瞬で出来てしまう。


 でも、流石にそれでは味気ないし、気合い入れたのが馬鹿馬鹿しくなるから、最後までしっかりと落ちるぞ。


 あれ、全然着陸しないぞ。頭から落ちてるから顔面クラッシュが今か今かと身構えているんだがなかなか来ない。もう、今俺が落ちているのか止まっているのかすら怪しい感覚だ。


 周りは真っ暗で特に何もない背景だ。だが、真っ暗っというわけでもなく、どこからか光に照らされていて視界に不自由はない。まあ、見るべきものもないんだが。


 もう、どれくらい経っただろうか。流石にハーゲンでも呼んで上に戻って別の方法で死のうかなんて考えていたところ、気づいたら俺は街の広場に戻っていた。


「ん?」


 俺は今、どうやって死んだんだ? 気づいたら此処に立ってたんだが、死因はなんなんだ? 


 うん、これはどうやら再びスキル取得委員会に委ねないといけないようだな。俺が考えてどうこう出来る問題じゃなさそうだ。どうせいつかはスキルをゲット出来るだろうから、それを見て判断すれば良いだろう。


 ❇︎


 そうして、俺は何度も何度も死に戻った。この死に方は死ぬまでに時間が掛かるから、効率的には良くないのだが、どうしても死因が気になってしまったのだ。


 ただ落下しているだけなのに、何処にもぶつかってはいないはずなのに、何故か死んでいる。俺はその謎を解明したいのだ。


 そして、遂に俺が手に入れたスキルは……



ーーースキル【即死無効】を獲得しました。


【即死無効】‥即死攻撃、及び即死することを無効にする。


 俺が手に入れたスキルは即死無効だった。俺はどうやら、落下している最中に即死していたようだった。


 何故即死したのか、という疑問の答えは分からないが、推測する限り、決められた範囲の外に行ってしまったのではないだろうか。昔のゲームのバグでフィールド外に出てしまうと即死亡みたいなことがあった気がする。


 ん? いや待てよ、俺は今即死が無効になったんだろ? その状態でまたあそこに落ちたらどうなるんだ? 無限に落ちるのか、それとも本当の終わりがあるのだろうか。


 めちゃくちゃ試してみたいのだが、流石にリスクが大きいように思える。明らかに想定されていないだろ、この動きは。これでもし戻れなくなった時のことなど考えると、流石にやろうとは思えないな。


 落ちてるだけなのに、強制的に即死させるってことは、何かしらあるってことだろうからな。危ない橋は渡らないに尽きるよな。


 まあ、ある程度死ねたし、これで心置きなく次のステージに進むことが出来るな。


 あれ? なにか忘れているような……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る