第215話 裸のハーゲン


 強い相手と強い装備かー、そんなこと思ってたんだな。強い相手っていうのは日頃の行動からしても分かるが、強い装備が欲しいっていうのは盲点だったな。普通に強いから忘れていたが、裸で戦っているようなもんだもんな。


 でも、言い方的に、どちらかというと俺が装備してるから自分もしたい! っていう感情なんだと思う。


 だが、これを機に装備を一新するっていうのもありかもな。この双頭虎の装備を長いこと使っているし、俺の装備もついでに新しくしよう。となると、ここいらで一回死に戻った方がいいな。今すぐした方がいいだろうし、後回しにすると忘れちゃいそうだからな。


 ウヒヒヒヒッ


 周りを見渡すといつの間にかに小悪魔達が再集合していた。さっきの勝負で殆どやったはずなんだがな。


 というか、また復活するとなると少し厄介だな。ここで落ち着いて死に戻りは出来なさそうだな。


『ハーゲン、一旦ここはちゃっちゃっと切り抜けて次の階層に着いたら、新しい装備を作ってやるからな。だからもう一回勝負だ。今回は負けないからな』


『分かったっす!』


 はぁ、はぁ、はぁ、今回はギリギリ勝てたな、もう千本桜を他方向に展開しながら、剣でも攻撃していた。無理かと思ったが、並列思考をした先で更に並列思考をするイメージでただただガムシャラに攻撃しまくっていた。


 すると、そのうち、



ーーースキル【分割思考】を獲得しました。


【分割思考】‥思考を分割して行えるようになる。熟練度に応じて分割数は変化する。



 と、急にスキルを獲得してしまったのだ。それからは、ハーゲンの三つよりも俺の四つの方が手数が増えるのは当たり前で、俺が勝利を収めることとなった。


 しもべに負ける主人とかダサいからな。なんとか勝利出来て良かった。勿論最初の勝負も有効だから、装備はしっかり作るぞ。純粋に俺の役にも立つからな。


 そうしてようやく崖の頂上にたどり着いたわけだが、流石にそれだけじゃ次の階層には行かせてくれないようだ。


 そこには、今まで何体と倒してきた小悪魔達を大きくしたような存在がいた。小悪魔を大きくしたからと言って、悪魔ということではない。未だニヤニヤは健在だし、気持ち悪いし、不快だ。


 悪魔ほどの存在感は無いものの、そこそこ強そうではある。周りも小悪魔達に取り囲まれ、俺とハーゲンはそのキモい敵と対峙している。


 よくよく顔を見てみると、長い鼻はひん曲がっており、ニヤケ顔は相変わらずキモいな。ただ、小悪魔と違って体付きも良くなっているため、フィジカル面がどうなるのかは少し不安ではあるな。


 どう、攻略しようかと考えていると、隣にいたハーゲンが一歩前に踏み出した。


 そういえば、もっと強い奴と戦いたいって言ってたな。ってか戦う気満々だな。全然いいけど。俺は俺で取り巻きの雑魚悪魔を倒す事にしよう。


 俺がハーゲンの背中を軽く撫でる。


 そして、その刹那、


 敵の姿は一匹たりともいなくなってしまった。


 俺は千本桜、ハーゲンはブラックサンダーで、敵を一撃の元に葬りさったのだ。


 周りを美しい桜色に包まれた俺達は勝利の余韻に浸りながら次の階層に向かうのであった。


 あれ? ハーゲンが納得するような強者っているのか? ってかもうそのレベルまで倒せるのなら、もう俺は監督役に徹するべきか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る