第212話 障害物競走


 よし、この予想外の強さのスケルトンならぬ、ラヴァマンはここのマグマに放置しておいて、適当に人が通ったらちょっかいかけさせよう。


 それにしてもなんとも平和な溶岩浴だな。一切敵が襲ってこないぞ? 一本道を通らない限りこんなにも安全なんてな。これは流石に運営も考えていなかったんじゃないだろうか。まあ、もしダメでもクリアさせてもらうからな、抜け道を作った方が悪いだろ。


 ちょっと一本道にハーゲンでも走らせてみようかな、どんな風になるのか気になるし。


「ハーゲン!」


『ちょっと障害物競走してみたくないか?』


『障害物競走っすか? それ美味しんっすか?』


『食べ物じゃないぞ? お遊びだ。とっても楽しいぞ!』


『やるっす! 楽しいならやるっすよ!』


 ちょろいな。取り敢えずランナーは決定だ。折角用意してくれたギミックなんだから堪能はしておくべきだからな。頑張れ、ハーゲン。


『お前は、あそこの魔法陣から一直線に走り抜けるだけでいいからな。途中で妨害されるかもしれないが、避けてしっかりゴールを目指せよ?』


『簡単っすね! それなら余裕っす! 一瞬でゴールするっすよー!』


 ハーゲン選手がスタートラインに到着しました、その顔には余裕の表情、まるで今から襲いかかってくる試練が楽しい遊具とでも言わんばかりの笑みを浮かべています!


 さて、一体どんな走りを見せてくれるのでしょうか、右前脚で数度地面を引っ掻き、今スタートしたーー!


「え?」


 え? 頭がついていかない、何が起こったんだ? 一つずつ整理していこう。


 まず、俺が茶番実況をしながらハーゲンがスタートするまで見守っていたんだが、ハーゲンがスタートした瞬間、消えるかのように飛び出し、一気に駆け抜けた。


 マグマ側も予想外の速さに驚いたのか、最初はついていけなかったが、それでも瞬く間に速さに対応し、仕掛けてきた。


 その内容もまた驚きなのだ。先程乱入してきたイモリを含め、様々な種類のモンスター、トカゲや魚のようなモンスターが攻撃し始めたのだ。勿論、俺らの切り札ラヴァマンも攻撃している。


 攻撃の仕方は様々だが、溶岩を飛ばすような攻撃が多く見られる。水鉄砲のように一直線に飛ばすものもあれば、球体の溶岩を飛ばす攻撃もある。ただ、ラヴァマンだけが溶岩を操って追尾させている。


 ただ、それでもハーゲンが速い。全ての攻撃を置き去りにして駆け抜けていく。追尾されても全く意に介してない。


 だが、それだけではないようだ。周りのモンスターの攻撃に加え、一本道が急に崩れたのだ。これはかなり悪質な罠だと言える。まあ、少しの情けで、足を乗せたら落ちるのではなく、その罠の少し手前に到着すると自動的に落ちるようになっていた。


 しかしながら、そう、俺らのハーゲンだ。しかも本職は空担当だ、最近になって他の仕事もするようになったが、空でブイブイ言わせていたハーゲンに落とし穴の一つや二つ、いやそもそも一本道すら必要無いが、関係ないのだ。


 熾烈な攻撃がハーゲンを迎え撃つ。幸いな事に、地面からマグマが吹き出してくる等の通った時に発動する型の攻撃は、ハーゲンは全て置き去りにしてるが、モンスターも対応してきており、偏差撃ちなどもしてくるようになった。


 ハーゲンも流石に厄介そうにしているが、スピードに変化をつけて対応している。やっぱり器用だな。流石は俺らの従魔筆頭だけはある。


 おっと、そうも言ってられない事態がやってくるな。これは最後の難関と言ったところだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る