第205話 虎の穴
「はっ」
気づくと俺は本当にベッドに横たわっていた。これであのサキュバスの言ってたことの信憑性が高まったな。だが、それと同時に、こちらの世界ではサキュバスは精神体って言ってたのだ。あいつの話の信憑性が高まったってことは、これも事実の可能性が大いにある。
だからどうにかしたいのだが、いかんせんどこにいるかも分からないからな。探しようがないというか、どうやって見つければ良いのかわからない。
先ほどから気配感知を使用してはいるものの、なかなか捉えられない。まるで霧の中にでも居るかのような感覚だ。もしかしたら、何か気配感知を阻害するような装置やスキルの様なモノがあるのかもしれないな。
まずは一旦外に出てみるか。もうここから逃げている可能性もあるからな。外にもしも気配感知が効かないのがあの部屋だけだったら、何か手掛かりが見つかるかもしれないしな。
そう思って、外に出たが案の定というか、やはり何も変わらなかった。
うーん、いよいよ手詰まりだぞ。この階層のボスがあのサキュバスだとしてあいつを倒さないと次に進めないんだろ? どうしようか。本当に倒すというか、見つけられるビジョンがない。
もう、面倒臭いから寝たい。サキュバスの罠だと知っててもまた眠りたくなるほどの心地良さだった。
よし、寝る前に最後の足掻きをしよう。寝るのはそこからでも遅くないはずだ。まずはサキュバスの気持ちになって考えてみよう。あのオンナの気持ちになれるとは思わないが、少しでも何か得られるものがあるかもしれない。
まず、サキュバスは俺を眠らせた。それは何らかのスキルを使われたと確信している。なぜなら、普通に考えてゲーム内で寝るってどう考えてもおかしいだろ。だから、なんらかのサキュバスの力で眠らされていたと考えるのが妥当だ。
そして、サキュバスは俺を魅了して精気を吸い取ろうとした。だが、それは叶わなかった。俺はちっとも魅了されないし、精気も全く吸えなかったからだ。
恐らく、魅了されていなかったとしても、精気が全く吸えないってことはないのだろう。精気がなんなのか正確には分からないが、それが全くない状態で生きている男性はほとんどいないだろうから。
ここでサキュバスは相当焦っていたと思う。こんな事態は初めてだろうし、彼女自身もそう言っていた。かなり取り乱していたし、普通に素の性格のようなものが出ていたしな。
そこから、俺が自害するという方法でサキュバスの夢から逃れた。向こうからしたら想定外だっただろうし、悔しかっただろう。夢の中では思考も読めるし、圧倒的有利だったからな。
そして、今に至る訳か。今まで見たこともない、自分の力が殆ど効かない相手を目の前にしたら俺はどうするだろうか。もし命が一つなら、一目散に逃げるだろう。勝ち目はないからな。だが、命が二つ以上、もしくは、倒せもしないが倒されもしない場合だったらどうだ?
その場合、俺はどうにか勝機がないか探りつつ機を窺うだろう。
ということなら、恐らく、あのサキュバスも何処かで俺の事を見ているのだろう。逃げるつもりもなく、なんなら相手もどうにか倒せないかと狙っているはずだ。
つまり近くで俺の事を監視しているはずだ。それか、再び俺を眠らせようとしてきているかもしれない。
ならば、逆にこちらから出向いてやろう。
リスクは承知でサキュバスを狩りにいく。いつまでもここで時間潰す訳にもいかないからな。
作戦は、虎穴に入らずんば虎子を得ず、だ。
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