第199話 虫ケラと制約


 虫ケラとか言ってくる割りにしっかり剣で武装してくる当たり、胸中お察しするぜ。でも普通に考えて、自分よりも遥かに小さい相手に、巨大な剣を携えて突進って、攻撃を当てる気あるのか疑いたくなるレベルだな。


 煽る為に言ってたけど、本当に事実なんだな。事実だからこそこんなにもブチギレて、突進しちゃってるんだろうしな。そうだな、首領の攻撃を延々と避け続けてもいいんだが、それだと、反撃しないのか臆病者! とか言われそうだからな。そうだ、一見地味だけど、恥ずかしい方が嫌だと思うから、


「【サイコキネシス】」


「ぬをっ!」


 ズドーーーーーン!!


 男なら誰しも、友達の足を引っ掛けることくらいしたことがあるだろう。あれは歩いている時にしてもそんなに影響はないが、走っている時ほど、スピードが出ていればいるほど、ダメージが大きくなり、最悪の場合、派手にコケてしまうのだ。


 俺がサイコキネシスでしたのは、正しくそれだ。走っている首領の足首あたりにバーを展開し、そのままぶつけるイメージだ。上手くいけばあとは勝手に自重で転倒してくれる。簡単だが地味にタイミングとか難しいが、決まれば、圧倒的羞恥心に晒すことが出来る。


 敵前で派手にコケるなんて、しかもそれが自分の仕掛けようとした時にだ。圧倒的な隙を晒してしまうし、何よりダサい。そして勿論、それを煽らない手はない。


「おいおい、自分の体も上手く扱えないのかよ。こうなってくると体が大きい意味あんのか? 体以外そんなに使えないしとか言って体すらも上手く扱えてない。首領がこれじゃあ、もうしょうがないよな」


 自分でこかしておいて酷い言いようだが、まあ、これでだいぶ煽れただろう。眉間にシワがより、額に筋も浮かび上がり、一目で激昂状態なのがわかる。さて、ここからどう来るかな? これで諦めるような潔い性格はして無い筈だから、どうせ馬鹿の一つ覚えで突進して来るのだろう。


 あっ、馬鹿って言っちゃった。馬鹿って言った方が馬鹿だから、気を付けないとな。


 そんなことを考えていたら、予想通りさっきと全く同じように突進して来た。おいおい、ただコケただけだとでも思っているのか? まあ、それはそれでヤバいけどな。そう来るなら気づくまでやるか。まあ、俺は動いちゃダメっていう制約付きだからな。このくらい許してくれよな。


 そうやって俺は、首領が突進して来るたびに転倒させまくった。もう、ここまで来ると相手も意固地になっているのだろう。こんな虫ケラに負ける訳はない、とか思ってそうだ。


 それでもコカし続けていたら、最初は首領やっちまえ! だったのだが、徐々に首領頑張れ! に変わり、今ではもう、もう可哀想だからやめない? とかいつまで続くの? ていうような雰囲気になっている。


 うん、正直俺ももう良いかなって思ってるけど、やめ時がわからないし、首領は首領なだけあって丈夫な体しててしぶとくなかなか諦めそうにない。んー、こっから更にギアを上げれば諦めてくれるかな?


 んー、ロケット頭突きとかで頭に一発デカイのぶち込んでも良いけどな、ここから動かないってノリで言っちゃったからなー。んーこうなったら、遠距離攻撃だな。どうせ死なないだろうし、思いっきりド派手にやるか。


「ファイヤーエクスプロージョン」


 まずは、爆炎魔法で相手の地面を爆破させる、またしてもコケさせる形になったが、今回はそれだけではない。頭が倒れ込む先の地面も頭が地面と衝突するタイミングで爆破させ、最後に仕上げで、


「【千本桜】」


 無数の花びらで、首領を覆い尽くす。今頃全身傷だらけだろう。


 これでもう、かなりのダメージを与えられたのではないか? 一歩も動かないという縛りを設けて見て分かったのが、やはり俺は近接が得意ということだ。遠距離攻撃も充実させていかないとな。


「うぅ……ま、まだじゃ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る