第200話 強者


 こいつ、プライドと自信だけは一丁前だな。それだけ体に見合う大きさになっても惨めなだけな気もするが、この社会では通用したんだろうな。まあいいか、それよりも、まだ戦うつもりらしいこいつに最後どうしようか。殺してしまうのは前も言った通り避けたいからな。


 あ、俺のスキルに丁度都合よく、峰打ちのスキルがあるぞ。こんなスキルいつ獲得したっけな? まあ、小さいことは気にしたら負けだ。一発ぶちかまそう。


「【花鳥風月】、【魔闘練気】、【従魔武装】、【不動之刀】、【峰打ち】」


 まだあいつは延びているから、幾らでも時間を稼げるな。従魔武装でハーゲンをこの身に宿す。どんな見た目になっているんだろうか。キメラを武装したら、そりゃキメラになるだろうな。俺のすぐ近くにハーゲンがいるのが分かる。


 ハーゲンの魔法、ブラックサンダーを刀に纏う。


 更に、バフはしっかり積んでるが、峰打ちの影響で怒髪衝天が使えないのは惜しいな。本当は、絶命させられなかったら、不動之刀もダメなんだが、まあ、大丈夫だろう。久しぶりにこんなにはっちゃけるな。かなり全力だな。


 よし、じゃあ、首領が起き上がるまでは待ってやるか。


 ……図体デカイから、結構時間かかるな、とろい。恐らく、こうも綺麗に倒れること自体少ないのだろう。まあ、ゆっくり起き上がってくれ、そうすれば、俺の刀はどんどん強くなるからな。やっと片膝を着いたか、長い。


 ようやく立ち上がったようだ。さっきも結構いたぶったのにまだ立ち向かう精神が凄いな。まあ叩きのめすだけだけどな。よし、いくか。


 首領が迫ってくる。最初は足取りも覚束なかったが、気力だけで走っている。ここまでの漢とはな、見直したぜ。


「ふっ!」


 最大限溜められた刀に、魔闘練気と、ブラックサンダーがのった俺の一撃。峰打ちとはいえ、その迫力は首領が使っている剣に劣っているとは思えなかった。そのまま剣を振り抜くと、肉、骨、全てを切り裂き、打ち砕いた感触があった。ただ、少しの突っかかりを残して。


 これが恐らく峰打ちの効果なのだろう。スキルを発動していなかったら、もう、木端微塵だったのだろう。首領はというと、完全にビターンっと地面に延びており、意識も失っている。まあ、HPが1だけしか残っていないから、当然っちゃ当然だよな。


「ふぅ」


 どちらかと言うと、この後が大変だよな。自分の首領が瀕死にまでやられてしまったからな。皆んな怒り心頭だろう。どうやって静まらせようか。とりあえず回復でもさせるか。


 そう思い、メガヒールをかけようとすると、


「「「ワァーーーーーーッ!!!」」」


 周りから大歓声が響いた。


「え?」


 周りを見渡すと、全員が大喜びをしている。最初は復讐の雄叫びかと思ったが、一目見て違うと分かった。え、首領がやられてそんなに嬉しいの?


 すると、先程の門番が近づいてきた。


「お前さん、強かったんだべな! そりゃ、おらが握っても死なねえ訳だ。ところで、おらの手も臭いだべか?」


 俺が勝った途端、急に掌返しかよ。それにしても、気になるとこそこか? ズボラなら気にしなくていいだろ。


 その門番から話を聞くと、ここの巨人は強い者が正義らしい。そして、一番強い者が首領になるそうだ。だからあそこまで必死になって戦ってたのか、あいつは。ただの保身じゃねーか、見直し損だな。


 それに、首領は自分が首領になってから好き勝手していたようだ。だから、民からの評判は悪かったが、一番強い奴には逆らえないし、絶対だから、どうしようもなかったらしい。だからこそ、俺が勝った時のあの歓声が生まれたと言う訳らしい。


 ん? 一番強い奴?






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