第193話 花弁
「(ちょ、ちょっと待つのじゃ。今まで一度もお金を持って買い物をしてこんかったくせに、今回に限って持ってきとるじゃと? それならそうで、何故今まで持ってこんかったのか。それか、何故今回は持ってきたのか答えてもらわんと、納得出来んぞい!
ふぅ、しかし、売るって言った以上、急に取りやめる事なんぞ、出来んからな。くっ、まだ何日と経っていないというのに、もう手放せばならんとは……ここはもう、潔く諦めるしかないかのう……)
そ、そうか、今回はお金を持ってきているのだな、ならばなんの問題も無い、今から、取ってくるから待っているのじゃ」
ん? なんか今日の爺さん歯切れ悪いな。本当に前時代のNPCにでもなったのか? それに、奥に行ったっきり、なかなか返ってこないし、本当にメンテナンスいるんじゃないのか? まあ、NPCの故障って見たことないから、言ったところで信じられないだろうな。あ、やっと帰ってきた。手には、いかにもヤバそうで、厳重に封をされている、巻物があった。
こう、明らかに強くなれると確信できる時は、どうしても、心がワクワクしてしまうよな。気分が上がるというか、とりあえず、ワクワクする。
このゲームでは俺はレベルに囚われなくなった代わりに、レベルアップの達成感も味わうことが出来なくなってしまったからな。こういう、あからさまな強化はどうしても嬉しい。恐らく、男子なら誰しも共感出来るだろう。この快感は何物にも替えがたいものがあるのだ。
まだ、カクカクしている爺さんから漸く受け取ったスキルは、【千本桜】というスキルだった。
【千本桜】‥無数の斬撃属性の攻撃力のある、桜の花びらを敵に当てる。任意で動かすことが可能。
千本桜か、なかなかいいスキルだな。操作可能で斬撃属性を持った桜の花びらで攻撃できるのか、かなり幻想的な光景になりそうだな。今回ばかりはお金を持ってきていて、本当に良かった。もう早速使いたい。
今すぐに塔に戻ろうとしたが、よくよく考えると、まだお金はかなりある。半分以上消えただけで、残りを見てみると、普通に結構あるのだ。それならば、これもさっき必要性を感じたスキルであるが、従魔を回復できるスキルを買おう。
従魔に狩りをさせる時もそうだが、もしもの状況に陥った場合に、備えが有れば安心出来るからな。まあ、そんなことはほとんど無さそうだけどな。疲れた時に回復させてあげられればいいのだ。
「あの、回復スキルなんてものはありますか?」
「回復スキルか、そこら辺に置いとるものしか無いぞ。あまり好みではないからの」
この爺さん、スキルに好みとかあるのか? いやまあ、俺にも勿論あるから、当然と言えば当然なんだろうが、なんか少し意外だった。まあ、探してみるか。なんかおざなりに置いてあるらしいし、あまり興味が無いのか。
適当に物色していると、一つのスキルを見つけた。それは、【メガヒール】だった。
【メガヒール】‥対象を回復させる。回復量は自分のINTと対象のVITの値の差によって決定される。
え、これ普通に強くね? なんか埋もれてて、ガラクタ扱いされてるけど、普通に良さげだから、買おう。値段もそんなに高くないし、即決だな。何か一つでも回復手段があるだけで全然違うからな。
よし、早く帰らずの塔に行って、ゾンビ軍団を新しいスキルと従魔の力でさくっとクリアしたいな。新スキルがどれほど有効なのかだよな。ぶっつけ本番だし、どんな見た目でどんな強さなんだろうな。
やっぱり、新しくて強いスキルはただそれを使うだけで心躍るものだよな。あー、さっきまではあんなにもゾンビが嫌だったのに、もう、戦いたくてうずうずしている。
よし、もうすぐに戻ってきた。塔の中で死んでも、自分が死んだ所からスタートっていう親切設計のお陰だな。毎度毎度一からだったら、相当きついよな。
ゾンビパーティ、はじめますか!
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