第185話 不動の構え


 ふぅ、ちょっとはしゃぎすぎたな。全員一発で倒してたら、スキルも獲得しちゃったし、もうこのへんにしとくか。


「同名スキルを取得しました。スキル【一刀両断】はスキル【不動之刀】に統合されました」


【不動之刀】‥静止した状態から、相手を絶命させる斬撃を生み出す。静止している時間が長ければ長いほど威力が上昇する。相手がそれで絶命しなかった場合、五秒間行動不能になる。


 え、あ、確かに、前も一刀両断っていうスキルゲットしたような気もしなくもないが、統合したってことはそういうことなんだろう。まあいいか、気にしちゃだめだよな。全体的にはさっきのとは変わってないし、普通に強そうだし、大丈夫だろう。


 それにしても、食料室ってよくよく考えるとかなり不気味だよな。ってか、蠍とか蛇とかよく食うなーって思ってたんだが、全部オクスリに変えてたんだな。だから、恐らく獲物はなんでもいいのだろう。寧ろ、こいつらは獲物として向かなくて、放置されていたのかもしれないな。


 よし、残りの通路は一つだけだな。今までの二つはどちらも行き止まりだったからな、最後の通路は間違いなく、奥へと続いているだろう。逆に続いていなかったら、巣とは何だってなるからな。よし、行くか。


 俺は、残り一つとなった通路へと進んで行った。そして、そこにいたのは……アリだった。


「だろうな」


 逆に、何故違う生物がいる可能性を追ってるんだよ、ここは蟻の巣だろ。まあ、茶番は置いといて、また広場のような、開けた場所に出てきた。そこには蟻が集っていた。その中央にあるのは、さっき俺が回収した筈の薬だ。


 おいおい、マジかよ。ここにもキマってる奴らがいるのかよ。正確にはさっきの奴らはキマって無かったが、禁断症状出てたから一緒だろ。しかも今、絶賛ナウでキメてる最中だから、厄介なのはこっちかもしれねぇな。


 まあいいか。今回は流石に一刀両断スタイルは封印して、蓮撃スタイルでいくか。同じ事してたら飽きるからな。


「【韋駄天走】」


 一瞬で最高速になり、蟻達を斬っていく。この流れるように斬る感じも楽しいからな、お勧めである。


「ん?」


 何故か、蟻達の動きが変だ。普通、斬られたならば、もうちょっと躊躇するなり、怯えるなりがあってもいいと思うが、それが一切、見受けられないのだ。まるでそんなことどうでもいいと、言ってるかのように。


 しかも、それが微妙に鬱陶しいのだ。ずっと攻めていたいのに、途中で回避や防御に回らないといけなくなって途切れてしまうのだ。それによって、蓮撃の効果もそんなに高まらない。厄介だ。何故さっきの奴らとこんなにも攻撃性、というか、思考回路が違うのか? 一刀両断してないからか?


 あ、そうか。こいつらヤクでキマってんのか。それで、痛みとかも感じてないのか? やばいな、それはもう、ガチじゃん。早く処理しよう。やっぱりどんな生き物であっても、ヤク漬けはよくないな、早く解放してあげようか。


「すぅーーーー、はっ、【藕断糸連】【明鏡止水】」


 他にも、既にゾーンや高速思考は発動している。藕断糸連は一呼吸の間しか発動されない。だから、限界まで息を吐いて吸ったのだ。


 呼吸を止めた状態で次々と斬り伏せていく。攻撃されても、それをカウンターにして、起点にする。一切の無駄を無くして、斬れるだけ斬っていく。そして、


「ふぅーーーーーーーー」


「「「「「「ズバン」」」」」」」


 やばい、これ、超気持ち良い。

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