第184話 一刀両断
また、ホールのような広場に戻ってきた。先程は右に行って、ゴールのない迷路をさせられたから、今度は先に続いている道だといいが、まあ、とりあえず行くしかねえよな。
さっき右に行ったから、今、戻ってきた方向から見て右に行けば、真っ直ぐってことになるよな。よし、もう蟻はいいから、さっさと攻略してしまいたいな。
そして、次の方向へ進んでいくと、そこは食料室であった。幸い、人の死体はなかったが、蠍や蜥蜴、蛇など、そっち系が多いようだ。奥には何やら、透明の結晶がある。これはなんだろう。これも蟻達の食料なのだろうか。かなりの大きさで、山型に放置されている。
ちょっと、少しばかり拝借して、これが何なのか調べて見よう。
・武闘道液糖結晶 品質:可
ファイターアントが捕らえてきた獲物を、液糖にし、それを結晶にしたもの。ファイターアントらは、これを食べることで、脳機能の一部を活性化させ、凶暴化する。また、中毒性があり、これを一定期間摂取しなかった場合、より凶悪になる。
え、これもタダのクスリじゃん。ヤベーやつじゃん。中毒性あるって書いてあるし、なんなら禁断症状も出るってことだろ? こんなもの食ってんのか? ここの蟻はそりゃ空中まで追ってくるわな。狂気的なまでの執着だったからな。
それにしても、こいつらファイターアントって言うのかよ。ヤク漬けをファイターって呼んでいいのか? ドーピングってことだろ? これは取り締まらないとな。ということで、クスリは全回収で。蟻以外には無害とかだったら良かったんだけどな。まあ、使い道ないならないで、ずっと持っとけばいいか。
ガチ、ガチ、ガチ、ガチ……
もう、聴き慣れた展開のように思えるが、いつもと少し音色が違うな。これが噂の禁断症状ってやつか? そう思って振り返ると、そこには、何処が違うか問われても絶対に答えられないが、明らかに今までのありんこ達とは違う、怒り心頭のアリさん達がひしめいていた。
「お前ら全員中毒かよ……」
もう、目が完全に逝っちゃってる、俺の感覚でだがな。それにしても、食べ物の恨みは恐ろしいって言うけど、薬物の恨みはどうなんだ? って今から体験するのか。ここはさっき程広くはないから、従魔は無しでいいな。まずは一体倒して、それをもって、開戦といこうじゃないか。
「【ギロチンカッター】」
俺がそう唱えると、一体のアントが静かに絶命した。それを見た蟻達が、一斉に俺に向かって襲ってきた。今回は剣でいこうか、練習と思って、硬い甲殻を避けて、弱点だけを狙っていく。
他方向から同時に攻めて来られても、結局は一対一に持ち込めば、いつもと何ら変わりない。今は、前方の三方向から同時に攻められている。まずは右の個体から、瞬時に肉薄し、関節部分を斬っていく。首、脚、胴の順番で斬る。
斬った後、数秒はクスリの影響か、まだ襲っているようだったが、自分の現状を気づく頃には、死んでいるだろう。
次は、中央の個体だ。さっきと同じようにしても良いが、それだと味気ないからな。今度は、中央突破、全力で断ち切る。
「はっ!」
どうにか上手くいったようだ。正直、斬れるかどうか不安だったが、良かった。あまり、全力で斬ることが無かったから、案外楽しいもんだな。左の敵もこれで斬るか。
「ふっ!」
やばい、これはハマった。一刀の元に斬り伏せるのってこんなに楽しいんだな。やめられないぜ。とりあえず、ここに居るアリ達にはこれで死んでもらおうかな。
ーーースキル【一刀両断】を獲得しました。
【一刀両断】‥静止した状態から、相手を絶命させるほどの斬撃を生み出す。相手がそれで絶命しなかった場合、五秒間行動不能になる。
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