死にたがりが逝く！〜ステータスを振らない男の無双譚〜

第165話 真実と抵抗

　もう何度目かも分からないが、見飽きた岩場にやってきた。もう、ここいらでケリをつけたいな。まあ、地属性無効も手に入れたし、初撃の攻撃はもう食らわない。だから、死ぬことはないだろう。

　今回はしっかり攻撃を見極めた上でちゃんと討伐したいぞ。まあ死なないからある程度は気楽に行けるだろう。よし、もうここは終わらせよう。

「よぉ」

　もう、何度目か知る由もないが、こいつは俺のことを覚えているのだろうか？　もし覚えているのならば、相当嫌ってるはずだろうな。毎回毎回蹴って来られたら、流石に俺でも嫌いになるな。でも、そのくせに速攻で死ぬんだから、案外、こいつなんだ、弱いくせに、変な奴だなって思ってくれてるかもしれない。

　まあ、それもこれが最後だ。今まで一方的に蹂躙していたはずの相手から反逆され殺されるのはどういう気分なんだろうな？　とくと味わってくれ。

　そう思いながら、思いっきりいつもの三割増しくらいで蹴った。するといつも通りの反応を見せるが、いつもより蹴りが強かったからか、それとも今回が最後であると本能的に理解したのか、向こうも三割増しくらいの凶暴さでやってきた。

　もはや、隕石かとも思えるほどの、圧倒的質量と、それによるエネルギー、これを食らえばただごとじゃないと本能が、全身が叫んでいるが、それを理性で黙らせる。神の如く包容力で全てを包み込む様にデカブツの一撃を受け止める。

　よし、ダメージは入ってない！　ここからだ、ここから俺は何をされるんだ？　何をされてきたんだ？　全身で集中しろ、些細なことでも見逃すな、一瞬でも気を抜くな！

「ここだぁ！」

　俺は、ほんの僅かな空間のブレというか、違和感を察知し、その反応源である後ろに即座に振り向いて、遂に、元凶を捕らえた。片手で鷲掴みにしたのだ。

　そして、俺が掴んでいたものとは……

　チビゴーレムだった。

「可愛い……」

　そう、可愛いのだ。見た目は他のゴーレムとは違って、岩に同化できるような感じではなく、どちらかというと、闇に紛れられそうな、漆黒のボディを持っていた。

　そうか、毎回毎回こいつにやられていたのか。そりゃ、あのデカブツに全神経を注いでたら、気づかねえわな。こんなちっこくて、すばしっこそうな奴が物陰に隠れて、あのデカブツの超攻撃を囮に確殺を狙ってこられたら、流石に無理だわな。

　ってことは、こいつがボスなのか？　こんなでかい奴居るのに凄いな。なんか、毎回あのデカブツじゃなくて、こいつにやられていたって考えると、まだ気分はマシだよな。叱られるなら、美人の先生に叱られたい、みたいな感じだろうか？

　それにしても可愛いな、よし、従魔にしよう。

「【服従】」

「服従に失敗しました」

「【服従】」

「服従に失敗しました」

「【服従】！」

「服従に失敗しました」

　あっ、そうなんだ、そうくるんだ。急にこいつが悪ガキに見えてきたぞ。そうか、こいつはいわば、あざと悪ガキか。一番たち悪い奴だな。

　もし、悪さがバレても自分の可愛さを理解して、最大限罪を軽くするという、女子や、小さい頃の可愛い男の子がよく使う手法だな。そういうやつは嫌いなんだ、それに服従されないのも違うしな。うん、いい石だったな、だがこれでおしまいだ。

「ファイヤーエクスプロージョン！」

　うん、よく思えば、そんなに可愛くなかったしな。なんで服従しようなんて思ったんだ？　それもあいつの罠だったってことなんだろう。もう、さっさと次の階に行ってしまおう。

　少々、道草を食べ過ぎたようだな。次の魔法陣も探さなくてはいけないからな、早く見つけるか。

　結局、ハーゲンが見つけた魔法陣の上に、ゴーレムが覆いかぶさっていたのだ。それを空中から気づいたハーゲン、偉い。

　やっぱり、俺いらないかな？