第164話 岩場と謎


 俺は、気づいたら死に戻っていた。俺が今いる広場という空間も、それを教えてくれている。


 ただ不可解なのが、どうやって死んだのかということだ。ってこれ、なんかデジャブ感がすると思ったら、一階層目ととても状況が似ているからだな。あの時も謎に殺されて、必死に考えたけど結局無駄だったからな。よし、今回も考えるのを放棄しよう。


 どうせ、何回も死んだら獲得スキルが俺に犯人を教えてくれるだろうからな。気楽に行こう。むしろ、死ねてラッキーくらいだしな。よし、再挑戦だ。


 塔の中に入ると、そこは岩場だった。もしかして一階層目からのリスタートの可能性もあったからな。これは、今後いずれまた死ぬことを考えると、嬉しい仕様だな。


 まあ、夥しい数の階層が続いてるとしたら、途中で死んだらまた初めからというのは鬼畜だな。そう考えると、妥当なのか?


 このくらいにしといて、さっさと、デカブツゴーレムにちょっかいをかけますか。今回は死ぬ前提で、に重きを置いていく。反撃等は一切考えない。ただただ、見る。


 まずは、デカブツゴーレムの動きにだけ注目してみる。鈍重な動きで腕を持ち上げ、持ち上げた力の反動と、重力のみで、攻撃している。一見、単純そうで、それほど恐れる必要は無いと感じてしまうかも知れないが、それでもその攻撃をするってことは、それだけで充分であるということだ。


 大きな巨体を活かした攻撃で回避も難しく、初見では避けるので精一杯だろう。まあ俺は今、初見ですら無いが、避けもしない。


 注意深く観察する、よくよく考えて見ると、俺が死んだことも確かに不可解だが、そもそも俺がその前にダメージを食らってることの方がおかしいのだ。


 一階層の時は、徐々に吸われていくという、いわば、継続ダメージのようなものだったから死ぬのは分かるが、これはどう見ても物理攻撃なんだよな。ゴーレムがただ腕を振り下ろしているだけだ。でも、たったそれだけで俺が死ぬわけがない。何か理由があるはずだ。


 そう思って、再びゴーレムに相対しようとすると、俺は広場に戻っていた。もう、やられていたのだ。


 この謎の整理をすると、どう見ても物理攻撃に見えるゴーレムの攻撃が通ったことと、それに加えて、俺が死んだこと。ゴーレムに攻撃された様子は一切見受けられなかった。これは謎すぎるな、スキル獲得委員会に丸投げしよう。


 よし、死ぬか。


 何度死んでも、どうやって死んでるのか全く検討がつかない。ゾーン、高速思考、深謀遠慮、全てしっかり発動してもゴーレムが何をしているのかわからなかった。どうやって俺を倒しているんだ?


 そこから、更にまた死んだ。ここで新たな発見があった。俺がダメージを食らった理由についてだ。


 ゴーレムを全体で見るのではなく、腕に集中してみると、微かに発光していたのだ。恐らく、何らかの魔法を使用していたのだろう。茶色に発光していたから、土魔法のようなものだろう。詳細はスキル獲得時までお預けだな。


 そこから、更に死に続けた。そして……


ーーースキル【地属性無効】を獲得しました。


【地属性無効】‥地属性によるダメージを無効にする。


 俺が獲得したのは地属性無効だった。ということで、ゴーレムが使っていた魔法は地属性だということが判明した。やはり、スキル取得係は有能だな。


 これで、ダメージを食らった謎は解決した。でも、俺はどうやって死んでいたのかは未だ謎だからな。最後の挑戦をするか。どうやってあのゴーレムは俺に気づかれずに攻撃をしているんだ? これまで何十回、もう百回くらいいきそうだが、死んできた中でずっと観察してきたのだが、全く手掛かりが掴めていない。


 一体全体、どうやっているんだ?

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