第154話 初体験と余裕
俺は気付いたら周りを囲まれてしまっていた。いつの間に囲まれたのか、俺はそんなにヘビ狩りに集中していた訳でもないと思うんだが。まあ、勿論、最初の取り決め通り、俺に敵意を向けてくる奴は全員攻撃していいからな。
今、俺の周りにいるモンスターの数は五体、その内、獣型が三体、蟲型、植物型のモンスターがそれぞれ一体という構成だ。これだけ他種多用な種属がいるなら、それだけで縄張り争いを起こしそうなモノだと思うんだが。
まあ、今は目の前の敵に集中だ。あちら側に動かれる前にこちらからケリをつけるか。剣を腰に構えて、神速を使って一気に肉薄、そして一刀両断にする。
これで、獣の魔物の一体であった、狼の魔物を倒した。お次はダチョウっぽい敵を振り切った刃の返しで首を刎ねる。そして、獣のラスト、鳥型の魔物だ。だが、やはり内の所のハーゲンと比べてしまうと少し見劣りしてしまうよな。まあ、しょうがない。ダチョウの首を刎ねたその刀で、跳躍しながら斬りつける。
「よし」
いい感じに獣型モンスターを倒す事が出来たと思う。殆ど反撃される余地も与えなかった、残りの二体、蟲型のアリのようなモンスター、と植物型の木のモンスターだ。この手のモンスターは初めてだからな、戦い方がよく分かってないのだが、アリの方は甲殻がとても硬そうな見た目をしており、剣では厳しいかもしれない。
その反面、木の方は芯が細いし、楽に切れると思う。でも、二人ともさっきの俺の攻撃警戒してか、絶妙な距離を取って、様子見をしている、なかなか賢いようだな。
だが、やはりそれほど賢くなかったのか、アリがカチカチと鳴らしながら俺に突進してきた。俺はすぐさま回避し、剣を振るわずに、
ドンッ! 拳で!
「ってー!」
さして痛くはなかったが、思わず口にしてしまう。アリの甲殻は丸みを帯びていて、俺の打撃がいい具合に分散されたのか、アリに全く効いている様子はない。そして、そうやってアリの動向に注意していたら、木による横槍が入れられた。
腕や体に巻きつくような攻撃だった為、慌てて回避しながら、剣を振るう。木は二本の枝を触手のように使いながらこちらへと攻撃してきたのだ。そして、それを今しがた斬ったのだが、斬った途端、瞬く間に再生し、何事もなかったかのように再び戦い始めた。
これは、まずい。当初の想定とはかなり外れた状況だ。拳による打撃が効くと思われたアリにそれが効かず。斬撃が効きそうな木にそれも効かなかった。これの何がまずいかって、相手にペースを取られてしまうということだ。
相手から仕掛けてきた攻撃にカウンターを決めたかったのだが、それが決まらないと後手後手に回ってしまう恐れがある。更に二対一だから主導権を握られやすい。
だからこそ、勝負を仕掛けるのならば今しかない。相手が攻めに転じる前に俺がケリをつける。
「ファイヤーエクスプロージョン」
まず、爆炎魔法で木を溶かす。再生されるのならば、それに負けない速度で粉砕してやればいい。そして、アリはよくよく考えると、甲殻や鎧を纏った相手との戦い方にはセオリーがある。
それは、関節を狙うことだ。
当たり前だと思うかもしれないが、これが大事なのだ。事実俺も忘れていたしな。木を倒した直後に、アリが再び突っ込んできた為、足の関節を狙う。
すると気持ちが良いくらいに刃が通った。そして、アリの体勢を崩すことに成功した。すぐさま俺はアリの上に飛び乗り、首筋の隙間を狙って、躊躇いなく刃を突き刺した。念の為、少しグリグリもしておく。するとアリは、完全に絶命したのか動かなくなった。
「よし」
これで完全に終了っと。途中、予想外の事態が発生したけど、なんとか倒す事ができたな。ってかまあ、流石にこんなとこじゃやられないか。俺もある程度は強くなったんだし、死ぬとしてももう少し進んだところだよな。こんな序盤でなんか止まってられないよな! さっさとクリアして、あの爺さんを驚かせよう!
「ふぁ」
でも、ちょっとだけ休憩しよ。なんか疲れたのか知らないけど少し気怠いから、ハーゲンでも呼んで、空での快適な旅を、
「はーg……」
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