第153話 塔と狩


 帰らずの塔の前に到着した。その高さを見ると、かなりの高さだ。やはり遠くから見るのと、真下から見るのでは全く違うな。


 中身はどういう構造になっているのだろう、どのくらいの強さなのだろうか、何階層あるのか、休憩地点はあるのか、ボスや中ボス等、気になることは沢山あるが、いくら考えても仕方がないな。もう、行くしかない、早速、行こう。


 その塔の扉は、簡素で重々しい、石の扉だった。今までこの扉を開けてきた人たちはそれぞれどんな気持ちだったのだろうか。此処に来ること自体憚られるこの世界で、何を思ってこの扉を開けたのだろうか。俺は、今までの先人を想いながら、その扉を開けた。


 中に入ると、そこは森だった。木々が生い茂り、木と木の間からは木漏れ日が差し込んでいる。どうやらここは異世界もしくは異次元なのだろう。いつの間にか入ってきた扉は消え失せ、森の中にただ一人取り残された。


 気配感知から伝わってくる気配はかなり多い。恐らくまだ見つかっていないが、それも時間の問題だろう。また、ここが、異世界、異次元に繋がっているという想定ならば、勿論広さの保証もない。階層になってるとしても上の階への行き方も全く分からない。


 今はただただ情報が少ない、情報を収集しながら、安全第一で行動しよう。


「ハーゲン」


『お前は上空から偵察をしてくれ。空にいる時は、向こうから何かされない限り攻撃はするな。少しでも、攻撃されたら、もしくはされそうになったら、問答無用でやっていいぞ。何かあったら教えてくれ、じゃ、行ってこい』


『分かりましたっす! 相手が俺っちに攻撃しそうになったらバッチリやるっすね! 任せるっす、では、行ってくるっす!』


 もう、本当に狩がしたかったんだろうな。目がキラキラしてたし、早口だったし、もの凄いスピードで飛んで行ったしな。ある程度、情報が集まったら、能動的な狩も解禁させてあげるか?


 でも、何階層あるかも分からんからな。飛ばし過ぎない程度にさせておかないとな。


「シャーーーーッ!!」


 おっと、俺もハーゲンの心配をしてる場合じゃなくなったな。そう言えば、隠遁発動しておけば良かったな。もう今更後の祭りだが。


 もう、すでに俺に対して敵意剥き出しで今にも襲ってきそうだな。俺もハーゲンに言った通り穏便にいきたかったのだが、まあ、仕方ないよな、向こうから仕掛けてきたのだ。さっさと始末しよう、ほかの敵に見つかってしまうのも嫌だしな。


 あ、そういえばまだあれを使ってなかったな。丁度いい機会だし、使ってみるか。


「【麻痺の魔眼】」


 俺がスキルを発動すると、一瞬ヘビの動きが止まった。俺にはその一瞬で十分だ。即座に肉薄し、剣を振るおうとして、剣を取り出していない事に気がついた。その為、攻撃出来なかったが、その代わりに名前とレベルを確認しておいた。


〈Lv.100 ジャイアントスネーク〉


 いや、何にも捻りの無い名前だな。確かにその通りだけども、もっとなんか無かったのか? まあ、いいか、ゲームがいいなら俺は何も言わないさ。


 剣を一振り取り出した俺は、再び魔眼を発動して、今度こそ大きなヘビの首を切り落とした。


「ふぅ、」


「グルルルルルル……」

「シーーーーーッ!」

「カチカチカチカチ」


 おっと、これは塔の攻略が長引きそうだな。気付いたら、全方位を多種多様なモンスター達に囲まれていた。

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