第149話 理想と現実
謎の声、神託? が聞こえたからそれに従う。従わないという選択肢は流石に無かった。何をすればいいのか分からないし、もう、早くあそこから出たかった。
同じ所に何もせずただ居るって、なかなかしんどいことなんだな。たまに道で看板持ちとかしているを見かけるが、相当きついんだろうな。それとも俺みたいに瞑想でもしてるんだろうか。
そんなことより、何故俺が神殿に呼ばれたのか、その理由を知りたい。何故なんだろう。当初は俺の忍耐力が試されているのかと思ったが、そうではなく、心の中で第三者に頼ることで、やっと新たな道が示された。
このことも含めて考えてみると、俺をここに呼び出したのが誰だかは知らないが、そいつが俺に望んだことが、俺が第三者に頼るという行為だった。
となると、俺にこの現象のことに知って欲しかったってことか? いや、単純に神やそれに思しきものに接触できるかどうかを試したということだろうか?
「あっ」
そういえば、何かの説明文にあった、世界の神秘というものに触れられるか試したのか? こればっかりは一人で考えてもどうしようもないからな。あの声に合った、最初に声をかけてくれる人が接触してくるまでは北に進みまくろう。
ん? 北ってこっちでいいのか?
いや、分かんねえな、どっちだろ。こういう時、人に聞いたら一発なんだろうけど、今この状態で話していいのか分からないからな。ここはどうしようか、
……ハーゲンに聞いてみるか。動物ってのは、人間には持ってない感性を持っていて、それで方角くらいは分かりそうだよな。正直に言うと、従魔、それもハーゲンより劣っていると言う事実は受け入れがたいが、まあ、しょうがないのだ。
みんな一長一短だからな。他人と比べるのはいいことではないだろうしな。
「【ハーゲン】」
『すまん、北ってどっちだ? 教えてくれ』
『え? 北っすか? あっちっすよ、狩にでもいくんですか? 俺っちにもやらせてくださいね?』
そう言って、ハーゲンが示したのは俺の進行方向とは真逆の方向だった。
普通に合ってる可能性も全然あるよな? って考えてた分、少し恥ずかしいし、ハーゲンが分かることすら分からなかったとは……主人としてどうなんだ? 望ましい主人像とは……?
まあ、そんなこと気にしてられないな。さっさと北に向かうとしよう。それにしても、ハーゲンのあの狩への執着は一体どこからなんだろう、元々の性格だろうな。間違いない、絶対そうだろう。
悔しさを背中に漂わせながら、北へと歩んでいく。話しかけられる、と言うのがどこまでを指すのか、正確には分からないため、人を避けながら歩いていく。
あの声を信じていない訳ではないが、もしもの可能性を排除したいからな。徹底的に人を避けた上で話しかけられたなら、もう間違いないだろう。
……話しかけられないぞ? どうなってるんだ? もう、人がそんなにいないぞ? どんどんどんどん人が疎になっていく。これはもう望み薄じゃないか?
こっから一発逆転あるのか? それとも逆に人気がないほど確率があるのか? もしかして、仙人の先輩に会えるのか?
もう半ば絶望しながら、道と呼んで良いのかも怪しい道を歩いていたら、何処から現れたのか一人のお爺さんが視界に映っていた。こんな人気のない所で、人がいること自体、おかしなことの筈なのだが、俺は特に気にすることもなく、ただ歩いていた。すると、
「す、すまん……み、水を分けてくれぬか……」
「えっ……?」
いろんな情報が一度に沢山流れこんできたので少し困惑してきた。
え? こいつ?
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