第148話 興味と忍耐


 神殿に到着した。そこは、かなり広くて、荘厳な建物だった。神殿とはもともとなんのために作られたものなのだろうか、現実にもあるが詳しくは知らないな。ただ、神殿と言って想像するのはやはり神話だろう。


 キリスト教や仏教、イスラム教ともまた違った世界観が繰り広げられているはずだ。世界の神話や宗教をきちんと調べて、それらの死生観について学んでみるのも面白そうだよな。俺と似た考えのところはあるのだろうか? また、それぞれを比較するのも楽しそうだ。


 自殺を推奨はないにしても、許容している宗教はないはずだからな。もしあったとしても、皆んな死んでしまったら、後世に引き継がれない。だからこそ、現実の宗教は命を大事に、自分の命を大事にするような教えがあるんじゃないか? 詳しくは知らないが。


 それに対して、この世界はどうだろう。この世界の神話や宗教、を詳しく見ていけば、現実のものとも比較出来るしな。新たな発見も出来そうだよな、うん、面白そうだ。


 おっと、話が逸れすぎたな。今は仙人クエストに集中しないとな。それにしても、神殿で何をするのだろうか。神殿といえば、儀式をしているイメージやその土地の象徴のイメージが強いんだよな。まあ、いい、早速中に入ってみるか。


 中は、外から見て想像していたよりも狭かった。まあそれでも、広いことに変わりはないんだけどな。


 ……え? 来たんだけど? 神殿の中に入ったんだけど、何も起こらないぞ? え、流石に、場所はここで合ってるよな? なら、なんで何も起きないんだ?


 分かったぞ、さては仙人になる者としてふさわしいかどうか見極めようとしているんだな。その一つとして、忍耐力を測ろうという訳か上等だ。瞑想、断食をしまくった俺の実力をここで見せてやる!


ーーー三時間後、


ーーー称号《動かざる者》を獲得しました。


《動かざる者》‥一定時間同じ場所に留まり続ける。同位置にいる時間によってVIT上昇。


 は? 流石におかしくないか? こんなにも拘束されるゲームだっけこれ。なんか申し訳程度に称号貰ったけど、これはタンク職の人しか使えないだろうし、ソロには一番縁遠いものだろコレ。


 しかも、もうかれこれずっといるぞ? 死に戻りする時は移動もあるし、強くなっていってるからまだいいけど、これだけ待って、称号一つじゃ割に合わなさ過ぎだろう。おいおい、もう、どうしたらいいんだよ、だれか教えてくれよーー!


『神殿を出て、まっすぐ北に向かいなさい。そして最初に話しかけてきた人物についていきなさい』


「え? あっ、はい」


 え? 誰? 神様? ってそれより、ここから次の目的地に行くには誰かに助けを求めないといけなかったのか……


 そんなのソロプレイヤーには難易度高すぎだろ! ただでさえ、自分の中で完結してるっていうのに、どう助けを求めろと? 一人だから自分との対話が多くなるのは必然だ。それなのに、自己完結してるなかでさらに別の第三者を登場させろということか、無理っしょ。


 もう、いいや、愚痴を言ってもしかたないしな。それに、教えてくれた人が神様だったら怒られそうだから、ここは素直に従っておこう。要らぬ面倒ごとは起こさないことに限るな。


 にしても、北に向えって言われたけど、本当に大丈夫なのか? 俺、自分で言うのもなんだが、かなり予定を遅らせたんだと思うが……


 それも、神の超常の力でなんとかするのか? それとも、全て予定通りですってか?


 ま、いずれにせよ、俺には信じる道しか残されていないんだけどな。

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