第145話 盲点と答え


 新たな攻撃が加わるかと身構えていただけに、何も追加されなかってから、少し拍子抜けした。それに効率化さんもまだ仕事をしている。ということは、本当にさっきまでと同じ攻撃だということだ。何かされていたら、効率化出来ないはずだからな。


 だが、怒り狂ってる顔もさっきはちゃんと吠えていたし、何もしていないという事はない筈だが……それに、一人だけ目が少し黄色がかっている。間違いなく何かしている筈だ。でも、分からない。一体、奴は何をしているんだ?


 ただ、怒り顔の事を除いても一つ厄介な事が発生している。それは、同じ鳴き声も同時に吠えるようになったことだ。今までは、被らないようにしてくれていたのだが、今回はそんなのお構いなしだ。


 まあ、実際は、ガルもガルルもそんなに脅威ではなく、ガルガルが少し危ういくらいなのだ。たいして、それによって脅威度、難易度が上がったわけではないのだ。


 だが、問題は別の所にあるのだ。それは、今までに無いパターン、だということだ。それだけを聞くと、別に二段階目の変化の時と変わらない、とそう思うだろう。だが、実際には随分と違う。


 それは、効率化が発動しないのだ。別に発動しないだけなら、別に大丈夫なのだが、効率化が発動する時もあるのだ。それも、発動する時の方が多い、その為、効率化が来ると思って行動が遅れてしまうのだ。


 別にちゃんと構えていれば大丈夫なのだが、同じ鳴き声は忘れた頃にやってくるのだ。俺自身かなり限界に近いから、意識しようとしても、すぐに体が楽な方を選んでしまうのだ。それに、その楽という甘い蜜をたっぷり堪能した後だから、余計にな。


 まあ、これは時間が解決をしてくれるものだから、一刻でも早く効率化が発動してくれる事を願って、耐え続けるしかない。


 今、取り急いでやばいのはそれだが、それよりも不気味なのは、勿論、怒り顔だ。未だ何も変化がない。時折目に注目しても、黄色になったり、紫になったりするだけだ。特に何も変化がないのだ。それが、より不安を煽ってくるのだ。


「「「ガルガルっ!!!」」」


 来たっ! とうとう恐れていた、ガルガルの同時鳴き声だ、これは一番回避が難しい上に、勿論、効率化も発動しない、全力で避けなければ……


「えっ!?」


 何故だ、体が動かない、なんでだ、まるで体が石になったみたいだ。


「はっ、激おこ?」


 そうして、激おこの顔を見てみると、目は灰色に光っていた。


「あ、まさか」


 そう、まさかだ、もしかして激おこは状態異常を俺にかけていたのかもしれない。黄色の目の時は麻痺を、紫色の時は毒を、そして、今は灰色で動かないこの状況を考えると…石化みたいなものだろうか。まあ、大きく間違ってはないだろう。


 そうか、そういうことか、俺は麻痺と毒は無効化スキルを持っているから気がつかなかったのか。そして、今になって初めて気がついたということか。くそっ!


 それにしても、メソメソからキレて状態異常かけてくるってマジで性格悪いな、絶対にいじめられるぞ? そんな性格だったら。


 未だ動かない俺を気にも留めずに、弾幕の流星と、斬撃が飛んでくる。俺はここで終わるのか、そう思い、半ば諦めかけていたが、


「ここで、諦めてたまるか! 【龍化】あ!」


 俺は龍化した、そして無理やり石化状態から逃れた。勿論、体積が大きくなった分被弾したが、龍化状態はHPが増えていたのだろう、なんとか耐えた。


 そして、最後の斬撃がくる、この巨大で避けることは不可能だ。だから、ここで決めるっ!


「グァああああああああああ!!

(【怒髪衝天】、【乾坤一擲】、【明鏡止水】、【花鳥風月】、【麻痺の魔眼】!)」


「グギャギャ、グギャーーー!!!

(【思念の頭突き】ーーー!!!)」




 俺の全てを出し切った攻撃を食らったケルベロスは、ポリゴンに変わった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る