第139話 本気と価値


 その大きな扉をあけると、そこにはなんと……骨がいた。


「うん、知ってた」


 どうせそんなことだろうとは思っていた。だが、少しだけ思っていたところとは違う部分があった。それは、一本、一本の骨が太い事だ。そして、何よりも巨大なのだ。


 普通、スケルトンといえば、骨しか無くガリガリのイメージだったし、実際に今まで戦ってきたスケルトンは皆そうだった。しかし、このスケルトンは違うのだ。一言で言うならば、ゴツい、だな。


 俺がそうやって冷静に相手を分析していると、


『ご主人様! とりあえず、戦ってみてもいいっすか? 俺っちだけで倒せるか分かんないすけど、挑戦はしてみたいっす!』


 案の定、ハーゲンからの念話が飛び込んできた。それにしても、勝てるか分かんないのに、とりあえず挑みたいって、本当に脳筋だよなハーゲンは。


『分かった、良いだろう。ただし、いくつか条件がある。一つは、無茶をしない事だ。ギリギリで勝ってもあまり意味はないからな、どうしても勝たなければいけない相手の場合逆にそうしなければいけないが、今回は違う。余裕を持って勝てないと判断したらすぐに戻ってこい。

 二つ目は、どんなにいけそうと思っても、体力が三割を切ったら速攻戻ってこい。これもさっきのと被るんだが、指標として伝えておく。

 これだけ、お前に言ってるのは、別にお前を信じてないって事ではない。お前は死んだら恐らく戻って来ないんだ、折角喋れるようになったパートナーに死んでもらいたくはないんだ。どうだ、守ってくれるか?』


『ご主人様ぁ、ありがとうございますっす! そんなにも心配していただけるなんて……この私、死んでも必ず生きて戻ってくるっす!』


 いや、だから、死んだらダメなんだって。まあこれは言葉の綾みたいなもんだから、これにツッコミはしないけど、少し不安にはなるぞ? それと、やっぱり、ハーゲンはすこしというか、かなりバカだよな? ま、まあ別にいいんだけどな。


 俺がハーゲンについて思い巡らせている間に、もう既に戦いの火蓋は切って落とされていた。


 戦闘の流れとしては、ハーゲンが絶え間なく猛攻を繰り広げて、それをデカ骨が防いでいる、というような流れだ。だが、やはりというべきか、ハーゲンの攻撃方法からして、フィジカル負けしてる相手には少し分が悪いのだろう。


 脚や嘴などの攻撃が決定打になってない。それに加えて、今のところ常に攻撃し続けている為、消費が激しい。このままいって、息切れしたら、一刀の元に切り捨てられるだろう。


 相手の装備は剣と盾と言う非常にシンプルではあるが、それ故に対応力が高くハーゲンも攻めあぐねている。


 そろそろ、何か策を考えないともう厳しくなってくるぞ、息切れ寸前のハーゲンに対してまだまだ余裕のデカ骨、交代するのは時間の問題かと思ったその矢先、


『ふう、本気を出すか』


 いつもとは違う雰囲気のハーゲンの声が何故か念話に乗って聞こえてきた。その声は非常に逞しく、自信に満ち溢れており、何よりカッコ良かった。


「キィェアアアアアアーーー!!」


 ハーゲンの雄叫び? 鳴き声と共に、一筋の黒雷が相手の元に落ちた。


『やった! やったっすよ、ご主人様! 何とか危ないところでしたが倒すことが出来たっす!』


 え? いや、ちょっと待て、さっきのお前はどこ行ったんだ? その前にあれは何? 俺のどのスキルよりもカッコいいんだけど、それに、威力おかしくないか? さっきまで決め手に欠けてただろうがよ!


 あれ? もう本当に俺いらなくね?



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