第137話 キメラと死の城
そんな訳で俺は早速第四の街に向かって、帰らずの塔を攻略しに行こうと思う。そう思い、ハーゲンに乗って次の街に進んでいると、ハーゲンが、
『ご主人様、ご主人様! 俺、あそこのボス倒したいっす。なんか最近体が鈍ってる気がするから、少し体動かしたいっす! ダメっすか?』
という念話が飛び込んできた。そういえばあのボス倒してなかったな、なんか急にやる気が無くなったんだっけな。まあ、倒したいとも思ってないから、ハーゲンにやらせるか、なんだかんだハーゲンの戦闘を見たことないからな。ピンチそうだったら骨ズを加えれば勝てるだろうよ。
『そうか、いいぞ、やって見ろ。勝ったらなんか好きなご褒美やるから、頑張るんだな。死にそうになったらヘルプ入れるから安心して戦うんだぞ』
『本当っすか! ありがとうございますっす! ご主人様の助け無しで勝てるよう頑張るっすよ! 少しワクワクしてきたっす!』
そんなことを言うと、先ほどとは比べものにならないくらいのスピードを出し始めた。あっという間に死の国の城の前に到着するや否や、
『よっしゃー! ご主人様、行くっすよー!』
と言って、戻りもせずに走り始めた。なんでこんなに元気なんだ? 狼が入ってるから、走るのも速いことで何よりだ。爺さんの家で素材に使ったのはライトニングイーグルだったから、このスピードは狼のもので間違いないだろう。俺も神速を使ってハーゲンを追い越しつつ、門の中へと侵入していく。
俺ら二人、じゃなく一匹と一人が門の中に入ると、雰囲気が一変した、ような気がした。門の外側から見ている分にはただの綺麗な庭という感じだったが、入ると、なんか人の気配というか、生きている気配、とでもいうべきか、物である筈のものに命が吹き込まれ、こちらを見ているような、そんな感覚に襲われた。
一言で言うならば、不気味になったのだ。
流石は死の国といったところか、死と生の区別が曖昧だ。まるで自分達な死んでいるかのように感じる節さえある。ここに来るまでが楽過ぎた分、ここで洗礼を浴びせられていると考えるべきだな。まあ、突破するでしょう……ハーゲンが。
ハーゲンも何かを感じ取っていたのか、動きを止めていたが、俺が歩き出すとそれに続いてきた。そうして、城の中に入ろうとすると
カタカタカタカタカタ!
「まあ、そうくるだろうな」
なんとなくそんな気はしていた、余りにも生が、生命力が充満していたように感じるし、気配感知も反応はしていた。ただ、地面に潜っていたからか、或いは、まだ実体が無かったからか、反応が薄いというか、漠然としていた。その為、こちらからはただ歩くことしか出来なかったのだ。まあ、丁度良いか。
『ハーゲン、やって良いぞ』
『本当っすか! やったっす! ありがとうございますっす!』
ハーゲンに倒して良いと命令すると、嬉々として飛び出して行った。本当にだれだ、こんな風にハーゲンを育てたのは、俺はこんな風に育てた覚えはないぞ?
そうこうしてるうちに、ハーゲンはスケルトン達に近寄り、ある時は前脚で、ある時は嘴で、ある時は体当たりで、ある時は魔法で、スケルトンを骨に変えていった。その様子は子供がおもちゃで遊ぶように無邪気な様子だった。
ハーゲンはキメラであるから、走る時に翼の恩恵を得ることで爆発的な推進力を生み出している。それに加えて魔法の行使も可能とあらば、こいつは一体何者なんだ? めちゃくちゃ強いじゃねーかよ。
程なくハーゲンが戻ってきた。
『どいつもこいつも、骨がなかったっすね。大体一発で終わるから気持ちよかったっすけど、まだまだ足んないっすね。ご主人様、俺、もっと暴れたいっす!』
うん、もう俺いらねーな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます