第136話 伝承と決意
は、ハーゲン、お前、そんな軽かったのか。まさかの、っす、とは……
ってか、それより狩りに行きたいって……どんだけ暴れたいんだよ、まあ、そういう事なら、これからは戦闘にも参加させてあげないとな。
「お、どうじゃったか? 上手くいったかの? 念話は簡単じゃろ。それにモンスターの声を聞けるのはとても意義深くての、モンスターの視点から物事を考えると、また違った一面から世界を見つめ直すことができるのじゃ。お主もやってみると良いぞ。
あと、これだけでは対価に合わんからな、他に欲しい情報はないかの?」
モンスターの視点から世界を見つめ直す、それは面白そうだな、だがまあ俺視点からの世界すらまだ十分には見つめれてないからな、大分先の話にはなるかとは思うが。
それにしても、他に欲しい情報かー。特には無いんだよな。これと言って欲しいもの、あるいはそれにまつわる情報、んー特にないからツケにしといてまた欲しい情報が出て来たら、聞きにこようかな? それが一番いい気がするぞ。
いや、待てよ、そういえば最近、魔力を使用するスキルが多い気がするんだよな。サイコキネシス、テレパシー、それに魔眼もだな。それに加えて、俺は魔法も魔術もちょこちょこ使っているからな。俺の少ないMPじゃ心許ないんだよな、自動回復も持っていないし。魔力事情をどうにか改善したい。そうだな、これについてこの爺さんに聞いてみるか。
「そうじゃのー、魔力か。もともと魔力はその人の格、つまりレベルが上がっていけば自然と上がっていくものじゃ。じゃがそういうことではないのじゃろ? スキルや称号の効果で魔力、もといMPを増加させたい、と。んー、方法が無くは無いが、少々困難な道のりになってしまうぞ? それでもいいならいいが」
お、やはりあるのか、これは良いことを聞いたな。だが、やはりそう簡単にいく話ではないのだろう、多少危険な道のりだったとしても挑む価値はあるだろう、悪魔を倒したり、まだ誰も見たことの無い絶景を見る道のりの方が果てしないのだろうしな。
「大丈夫だ、その情報について教えてください。その情報次第では俺の与えた情報もチャラにします」
「うむ、よかろう、覚悟は決まっておるようじゃの。じゃが、儂も伝承レベルでしか聞いたことの無い話じゃ。もし、生きて返ってこれたら、沢山土産話を話してくれ、楽しみに待っておるぞ。
では、その伝承について話すかの。それは、ここの次の街、第四の街の西側に大きな大きな石の塔があるのじゃ。そこには凶悪で凶暴なモンスターがうじゃうじゃおる、それらのモンスターを倒しながら最上階まで登ると、塔からの贈り物として、魔力吸収というスキルが手に入る、という伝承があるのじゃ。
なぜ、ここまで具体的に分かっておいて伝承なのか、という疑問があるかもしれんの。それは最もな疑問じゃな。それは、未だかつて誰もその塔をクリアした事がないのじゃ。儂の記憶の中ではの話じゃがな、その塔に挑戦した者は、悉く帰らぬ人となったのじゃ、それ故にその塔は帰らずの塔とも呼ばれるようになったのじゃ。
じゃが、何故かこの伝承は広まっており、何故か皆、魔力吸収のスキルを貰えると信じて疑わない。そうして何人もの若者が挑戦しては敗れる、そうしてもう何年も何年も経ったのじゃ。もう今ではほとんど誰も挑戦しておらんが、たまに面白半分で入った若者が帰ってこなくなった、という話も聞く。
どうじゃ? 危険じゃろ? 正直、儂は勧めんぞ。お主とやらねばならぬ検証はまだまだ存在するからの」
おっと、思ったよりも、キナ臭い香りがぷんぷんする伝承だな、怪し過ぎるだろ。でもまあ確かに魔力吸収はかなり魅力的なスキルだな、どう言った効果になるのかは未知数だが、相手やそれに限らずあらゆる物から魔力を奪えれば、自分の強化と相手の弱体化を同時に図れるからな。なかなか強いスキルだ、取りに行かない手はないな。
「勿論、行きます。ただ、必ず生きて返ってきますよ。こう見えても少しはやれる方なんでね。それに……」
俺はプレイヤーだしな、本当の意味では絶対に死なないし、死ねない。それは俺が一番よく知ってるからな。
「それに……なんじゃ? まあ、いい、それよりもお主がそこそこやれるのは分かっておる、そうじゃなきゃこうして話しておらん。じゃが、それでもなお危険な場所なんじゃあそこは。
お主の決意は変わらんのじゃろう、では、必ず戻ってくるのじゃよ、儂が教えた情報で死なれると目覚めが悪いからの。あと、検証もまだまだしたりんわい」
爺さんが思いの外、心配してくれてなんか少し嬉しいな。これが人間の温もりってやつか? まあ、ちゃんと戻ってくるから安心して欲しいぜ。
それにしても、帰らずの塔か……少し楽しみだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます