第132話 条件と進化


 流石にいくら物知りと言ってもこのホネホネ十本腕のことは知らないだろう。


「何を出してくるかと思えばスケルトンソードマンデケムか。実際に見るのは初めてじゃのう。じゃが、知識としては知っておるぞ、スケルトンソードマンは最大で二十本の腕を持てるからの。見た目はかなり気持ち悪いが」


 な、なに? このホネホネテンアームズを知ってるだと? それに、この腕の本数がマックスではないだと!? 確かにまだまだいけそうな雰囲気はあったけど、この完成度を見てしまうと、こいつが最終形態って思ってしまったぜ。


 くそ、骨十腕がダメなら、アイツらでいくしか無いな。敵をとってくれ、


「スカル、ボーン!」


「ほぅ、なかなか珍しい魔物じゃの。じゃが、勿論知っておる。ウッディスケルトンジェネラルじゃろ、こいつも実物を見るのは初めてじゃが、スケルトンは生息域や本来は食べるはずのないものを食べ続けたりする事でその骨に変化が起こることが知られておるのじゃ。珍しいと思って捕まえたのか、まあ、かなりのレアではあるが、そこそこじゃの」


 やばい、この爺さんバケモンだ。ウッディスケルトンジェネラルのことを知ってるだけじゃなくて、その背景知識までも完璧おさえてやがる……こ、こうなったらうちのエースに気張ってもらうしかねぇな。頼むぞ、


「はーーーーーげんっ!」


 あ、やべぇ、変換ミスった。


「ハーーーーーゲンっ!」


「ん? さっきまでとは随分違うモンスターが出てきたの? それにそんなに珍しくないぞ、そいつは。ターバリーホークは高山に生息しており、冬になると、麓に降りてきて狩をするのじゃ。見た目が良いから人気はあるが、全然珍しくはないぞ?」


 えっ、そうなの? ま、まじで? 俺のハーゲンが、そんなに珍しくない、だと? そ、それはダメだ。ハーゲンはハーゲンだ、オンリーワンなんだ、そんな大衆に埋もれていい存在じゃない!


 今、手元にある素材は、これは……ちょうどいいな。これでハーゲンを新たな高みへ!


「【強制進化】!!」


「従魔:ターバリーホーク、個体名:ハーゲンがターバリーダークウルフォークに進化しました」


 そこに居たのは、先程までのハーゲンとは似ても似つかない、異形の形をしたモンスターだった。闇のオーラを纏い、足が四足になり、どれも太い。そして、翼も大きくなっている。顔はそれほど変わっていないが、眼光が鋭くなっている。


 俺は、ハーゲンが以前捕まえてきた、あの狼を素材として使った。種類が違うモンスター同士だとここまで変わるのか。もう、タカとかそういう次元ではない、この姿は鳥、というより、グリフォン、と言った方がしっくりくる見た目だ。


 ただ、神々しさや雄々しさと言った物はほぼ感じらられない。禍々しさや、凶暴さの方が強く感じられるだろう。


 うん、でも今回の進化はなかなか良かったんじゃないか? 俺好みの見た目になったし、何より強そうだし、足も立派だから、ハーゲンに乗って陸路も走れるだろう。陸、空可能となれば、後は海だけだな。まあ、いつかそれにも対応するかもしれないな。


 よし、これならハーゲンも特別な存在になれただろう、ハーゲンも嬉しそうだし、満足だ。そんな気持ちで、何気なく振り返ると、


「な、なんじゃ、その化け物は……そ、それにお主今何をした!?」


 よっしゃーきたー! これでハーゲンも正真正銘特別な存在認定だな! よかった、よかった、ハーゲンが大勢の中の一羽なんて望むとは思えないしな。これでこそ、真のパートナーって感じだよな、いやー良かったなー。


 そう思いながら、ハーゲンを撫で撫でしながらスキンシップをとっていると、後ろからもの凄い圧力と共に、


「頼む! どうか儂に今起きた出来事の説明をしてくれ! なんでも答える、答えるからそうやって、焦らして、見せつけるような事はせず、はやく教えてくれ!!」


 あ、忘れてた。ハーゲンが進化した事が嬉しすぎてすっかり忘れてたぜ。

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