死にたがりが逝く！〜ステータスを振らない男の無双譚〜

第128話 念話

「え？」

　なんでサイコキネシスなんだ？　俺は今、念話の獲得に向けて頑張っていたはずなんだが……もしかして、やり方が間違ってたのか？　試しに木に向かって、俺が念話と思っている物を放って見よう。

　ドーン、メキメキ

　あ、これはサイコキネシスですね。はい、もう間違いありません。念話がこんな物騒な訳ないしな。ってか俺は知らず知らずのうちにこんな物を練習して、獲得していたのか。怖っ。

　まあ、それはいいとして、今は取り敢えず念話だな。念、もとい魔力を飛ばすのはダメだった、いや、念を飛ばすのはサイコキネシスだった。説明文にもそう書いてあったしな。つまり、念≒魔力でほぼ間違いないはずなんだ。そうなると、念を飛ばさずに、念を使って会話する方法、これを模索しなければならないということだ。

　そもそも、念と魔力が似ているのならば、何が違うのだろうか。似ているくらいだから、どちらかがどちらかを包含している、つまりどちらかが片方の上位互換である可能性が高い。

　そうなってくるとやはり、魔力の方が上だろうか。念は強い思考や意識で、魔力はそれに力が加わっているモノと捉えることが出来る。うーん、一見合っているように思えるよな、これ。

　いや、でもそうだとすると、強い思考や意識が念で、それを使ってサイコキネシス、念話が行えるようになる。つまり、極論誰でも使えてしまうという訳だ。強い思考や意識なんて誰でも使えるし、すぐに出来る。でも、俺は使えてないし、サイコキネシスにだって相応の時間を要したのだ。ならば、この仮説は間違っているのだろう。

　んー、そうなると逆か、そもそもこの理論がおかしいかだが、この理論が間違っている場合はもう俺に考察の余地はないから諦めるとして、逆だった場合はどうだろう。魔力があってその上に念があると考える。

　すると、魔力は俺たちが普通にイメージする、そのままの魔法を行う力の様なモノと考えて、念はその魔力に思いや意識が乗っている状態のモノと考える。そうすれば、サイコキネシスが発動するのも頷けるし、念話も魔力に自分の言葉や考えを乗せて相手に伝えるモノ、と理解しやすくなる。もしかしたらこれが正解なのかもしれない、まあ、答えを教えてくれる人なんていないのだが。

　よし、念についての考察は終わった、念話についても同様だ。それらを元に念話取得に向かう訳だが、相手に伝える際に飛ばすのではダメだった。でも、伝えなければならない。この伝えるというのは、相手に自分の言葉や考えが乗った魔力を届ける、つまり体内に送り込むということだ。

　んー、ならそのまま直で送り込めばいいのではないだろうか。念話というイメージから頭どうしで通信みたいなイメージがあるが、それに囚われすぎていたのかもしれないな。シンプルに対象と自分を繋いで、考えをダイレクトに送れば問題はなさそうだ。よし、やってみるか。

「ハーゲン！」

　うお、今度はなんだ？　その嘴に咥えてるものは、でかい虫か？　俺よりも大きい青虫の様な感じか、気持ち悪いから早く食べてくれ、捕食シーンも残酷だな、おい。弱肉強食って感じしかしねえよ、ってか本当どこでこんなこと教わってるのか？　俺が服従させる前はいつもこんな感じだったのだろうか。

　いや、そんなキョトン？　みたいな顔してこっち向かなくてもいいから、普段なら可愛いかもしれないが、今ばっかりは笑えないから、素直に怖いから早く食べて、お願い。

　ふぅ、やっと食べ終わったか。一応後ろ向いてたんだが、音とかリアル過ぎるからやばかったぞ。解脱してるおかげか少しはマシだったが、普通の状態なら多少は気分が悪くなってたかもな。

　よし、もともとは念話の為に呼び出したんだよ。ハーゲンの強烈な登場シーンのせいで結構吹っ飛んだんだが、やっと試せるな。早速やるぞ。

　まず、魔力を確認する、そして、それを一旦頭に集中させる、これはサイコキネシスと同じ要領だな。そして、伝えたい内容を思い浮かべる、今回は『あー、聞こえるかー？』だな。そして、それを首、肩、腕、手の順序で移動させ、掌に集中させる。

　その状態で、ハーゲンに触れ、魔力を送り込んでいく。一気にするといろいろ怖いので、ゆっくりゆっくり徐々に流していく。よし、いい感じだ。上手くいったと思い、ハーゲンの方を見ると、

　首を縦に一振り、さも聞こえているぞ、と言わんばかりにドヤ顔で頷いていた。