第127話 TA


 ふぅ、新しいスキルも獲得したか。今回、死に戻りをするに当たって、時間をめちゃくちゃ意識してやってみた。ただただ、死ぬだけと言うのもつまらないから、いかに速く死ねるか、にフォーカスしてやってみた。


 今回の死に方は水圧による死だ。現実でもフリーダイビングとかがあるから、海底に行くだけじゃ死ねないだろうけど、もし瞬間移動したならば、水圧と気圧の差で死ぬことが可能だ。


 だが、瞬間移動など便利なスキルは持っていない。そこで、龍化して海底までいって解除することで、疑似的に瞬間移動を可能にしているのだ。


 まあ、実際、この理論が合っているかは分からないし、別に間違ってても構わない。ただ死ねればいいんだ。そして死んだ後は、港町の広場で復活する。復活してから即神速起動からの、全力ダッシュ、そのまま走り幅跳びで海にダイブしつつ、龍化を発動、そのまま一気に海底まで行って、解除。これが一連の流れだ。


 最初は港いる大勢の人から変な目で見られたが、途中からはそういうもんだと気にも止められなくなった。龍化するタイミングが少しでも早ければみんなに露見してしまい、大パニックになる可能性がある為、そこだけが注意点だ。


 飛び込む際の注意点は幾つかある。一つ目が走り幅跳びの要領で飛び出す時に、前に進むだけでなく、なるべく高く飛ぶことも重要になる。そうすることで、水中に入った時により深く沈むことができ、いち早く龍化に繋げられる。


 二つ目は、飛び込む際の姿勢だ。これに関しては俺も大分苦労したが、着水時の抵抗を極限まで減らさなければならない。そうしなければ、高く飛んだ意味が無くなってしまうからな。最終的にベストタイムを出せるようになった頃には殆ど水しぶきを起こさずに飛び込むことに成功していた。


 以上の注意点を踏まえて、結果的に俺のスコアは9秒03だった。これはログを確認したから間違いはない。参考までに言っておくと、広場から港までは約一キロ、海底までの深さはおよそ五千メートルぐらいだと思う、感覚だがかなり誤差はあるかもしれないが、そんなもんだろう。


 気づいたら、高速遊泳、なんてスキルも獲得していたほどだった。いやー満足した、限界に挑戦するのは中々面白いな、オリンピック選手もこういう気持ちで競技に臨んでいるのだろうか? まあ、比べる対象がおかしいか。


 よし、そろそろ終わるか。もう、海岸線に西陽がかかっているし、なかなか綺麗な景色だな。こんな風景も現実ではそう見れるものではない。綺麗だ、太陽が大きく、海も広い、自分の小ささを改めて感じる。なんか明日からまた頑張れる気がするな、矮小な存在だけど、俺は俺なりに人生を謳歌するぜ!


 よし、ハーゲンを呼び出すか。


「ハーゲンっっ!」


 え、何咥えてんの? え、これどう見ても狼じゃね、鷹って狼くうのか? って、え、今まで何してたんだ? あれ? 俺が想像してたハーゲンの休みは、優雅に海上の空を飛び回りながら、他の鳥達と仲良くなって、ゆくゆくは番になるような鳥を見つけて、俺の元に帰ってくるのかと思ってたんだが……


 え? 狼? どゆこと? やばい、普通に理解が追いついてないぞ。大丈夫か? って他にも絶対いろいろ狩ってるよなこいつ、誰に影響を受けたんだ? それとも元からこういう生態の生き物なのか?


 というかますます念話の取得が急務になってきたなこれは。いろいろとハーゲンの人生ならぬ鳥生を聞いてみたくなってきたぞ、もしかしたら俺なんかよりも余程壮大な冒険をしてるかもしれないしな。


 でも、どうやって念話ってするのか? 念、って言ってるからには念を飛ばす必要があるのだろうか。やってみるか、いや、念って魔力でいいのか? 念なんてもの知らないから魔力で代用してやってみよう。そういう超能力系は魔力を使ってるイメージだしな。


 体の魔力を頭に集中させて……飛ばす! んー、最初は上手くいかないな、まあ、これに関しては練習あるのみか。一旦、ハーゲンには狩に戻ってもらって、俺は練習しよう。


 魔力を頭に集中させて、そこから一気に放出して、対象に飛ばす! お、だんだんコツを掴んで来た。これは、ただ、放出するだけではなく、放出する穴を意識することが大事なんだ。そして、パチンコの要領だな、ギリギリまで、溜めて、一気に放出する!


「出来た!」


 これは完璧に出来ただろう、申し分ないと思う。狙った所に飛ばせるし、これで完成だ!


ーーースキル【サイコキネシス】を獲得しました。


【サイコキネシス】‥念の力で物を動かしたり、衝撃波を飛ばすことが出来る。威力は魔力に依存する。


「え?」

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