第119話 王
確かナパーム弾ってのは薬品か何かで消えにくくした爆弾だったはず、だからこれもそれを模した炎のはずだろう。
それに俺は先程手に入れた称号、蜘蛛の天敵のおかげで蜘蛛に与えるダメージ量が増加している。
そして、ついにあの巨大蜘蛛に一撃を加えることができた。炎はどんどんと燃え広がっていく、あの蜘蛛も相当苦しそうだ。だが、それでも動かない、ならば、もう一度。
「ナパームボム」
「キシャーーーー!!」
蜘蛛が悲痛な叫びを上げる。流石に二発目は堪え難かったのだろう、のたうちまわることはせずとも、前足の二本を持ち上げ、威嚇してきた。これは今まで獲物と見ていたものを敵と見做したのだろう。殺気や、圧迫感がさっきまでの比ではない。
その間にも俺は大小様々な蜘蛛達から噛まれているのだが、並列思考をうまく利用して、どうにか思考から排除する。そして、目の前の敵に集中する。
パキッ、パキパキパキッ
おい、おいおいおい。蜘蛛って脱皮するのかよ、ただ今、絶賛燃えている体を脱ぎ捨てて、燃えている、体だった物に毒液? のような液体をぶっかけて消化している。ワイルドすぎたろ、もう少し人間みたいな事してくれよ、そりゃチート過ぎねぇか、おい。
相手の予想外の対応に驚いたが、だが、体の自由もきくようになった。何が条件かは分からないが、今のうちにケリをつけよう。
両手に剣を持ち、完全武装をする。うん、いい感じだ、久々に全力を出そうとすると、中々気持ちいいものがあるな、高揚感が半端ない。これで負けたらかなりダサイが、負けるつもりはないぞ。
よし、この高揚感に任せて、全ブッパしますか!
「【怒髪衝天】【明鏡止水】【花鳥風月】【乾坤一擲】!!」
よっし、最大限のバフを身に纏って正真正銘、会心の一撃!
その全力の剣で巨大蜘蛛の鋏ごと体を一刀両断に断ち切ろうとしたのだが……
「なっ!?」
キンっ
何故か体が少し重く感じて上手く刃が乗らず、鋏を少し傷付けた程度に終わってしまった。明らかに今蜘蛛から何かされた。動きが鈍ったし、ぎこちなかったのだ、気のせいではないはずだ。
いや、それにしてもこの状況はまずい、乾坤一擲でHPが1だからこの刹那に反撃されたら普通に死ぬ。それにその間に攻撃されなくても、怒髪衝天の効果でまともに動けない。暴走本能のままに攻撃して、返り討ちにあうだろう。どうすればいい、何かこの状況を打破できる、一手が……
はっ! あの手があったか。よし、あれを使おう。これはもう唯の奥の手なのだが、これを使うしかないだろう。体が蜘蛛のせいで上手く動かず、スキルも使ってしまった。そして怒髪衝天の影響下にある状態、このピンチを切り抜けるにはあれしかない、並列思考で無理矢理、発動して、
「ぎゅあがあああああああ」
そして、ここにもういっちょ!
「ぎゃぎゃぎゃが、ぎゃぎゃぎゃああああ」
これで終わりだああ!!
なんとかその攻撃を当てることに成功して、ほっと一息してると、怒髪衝天が解けて、一気に脱力感が襲ってきた。
そして、目の前をみると、みるも無残な形になってしまった巨大蜘蛛の姿がそこにはあった。
ーーー称号《蜘蛛之王》を獲得しました。
「《蜘蛛の天敵》は《蜘蛛之王》に統合されます」
《蜘蛛之王》‥現存する蜘蛛の王を倒すか服従させる。世界中の蜘蛛を操れるようになる、更に先代から魔眼を継承する。
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