第118話 反撃の炎


 ズブリ


 また噛み付かれた、さっきからもう、何体もの蜘蛛から噛まれている。俺が死を望んでから、いつまで経っても死が訪れない。どういうことなんだ……?


 あ、もしかして、物理攻撃無効? あーそうか、そういうことか最近ゲットして恩恵をまだ実感していないのは存在を忘れてしまうんだよな。あーまじか、死なないのか、なんだよ死を覚悟して、絶対リベンジしてやるっていう決意が無駄になったじゃねぇかよ。


 まあ、いい、リベンジ出来ないということは、まだ負けてないってことだよな。なら全力でいかせてもらおう。


「クラスターボム」


 俺の周りから全方位に向かって炎の塊、そう、爆弾のようなものが放たれる。それは敵に命中する前に一度空中で弾ける、そしてそこから無数の小さな爆弾のような炎が飛び出してくる。それら一つ一つが蜘蛛達を襲っていく、まさにこのような状況にうってつけだ。


 俺に群がっていた蜘蛛達がまさに蜘蛛の子を散らすように、消えていった。だが、一発一発の威力は小さいのか、少し大きめの個体はまだ生き残っている。まあ、それでもかなりのダメージを受けていることには変わりはないが。そのまま個別に爆炎魔法で倒していく。


 よし、これで取り巻き達はほぼ全て倒した。残るはあの巨大蜘蛛だな。体は……まだ動かない、まあだろうと思ったよ。恐らく元凶であるあの蜘蛛に何一つ攻撃していないからな、よし、いくz


 カサカサカサカサ


「はぁ?」


 辺りを見渡してみるとそこには先ほどまでとは何ら変わんない状況が広がっていた。


 おいおいおいおい、お前ら学習しねぇのかよ。って、いや、これ全部別個体なのか、だから臆せず立ち向かえるのか。だとしたら、巨大蜘蛛ぉ、お前が学習しろよ!


 だぁあー! もうすぐ噛むなよ、もうちょっと様子見しろ! 普通に痛いんだからな? それに噛まれるのはダルいしウザいしキモいからもういい、一旦焼き払おう。



ーーー一時間後、



ーーー称号《蜘蛛の天敵》を獲得しました。


 え? これ無限リポップですか、気持ちよくボス戦に挑ませてはくれないパターンの戦闘ですか? もうどれだけ倒してると思ってるんだよ。称号獲得したほどだぞ、そりゃこの短時間にこんな数用意されたらだれでもこの称号もらえるだろう。


 たった今十八回目の蜘蛛襲撃を追い払った。もう、いいですよね? ってか終わらないんだったら、こいつらを処理する必要すらないのに、なまじ死ねない分、鬱陶しさとイライラでついやってしまう。もう半ば条件反射の様になってしまっている。


 よし、ここは英断的無視をしよう、これしかない。蜘蛛にどれだけ噛みつかれようとも、全てを無視して、巨大蜘蛛に攻撃する。恐らく一発さえ入れられればどうにかなると踏んでいる。


 よし、十九回目の蜘蛛の波が襲ってくる。これをスキル全開放で集中し、巨大蜘蛛にだけ意識を向ける。発動したスキルはゾーン、高速思考、並列思考、花鳥風月だ。これで相手の動きも少し鈍るから、体感時間はかなり伸びるはずだ。


 そして、その内に、巨大蜘蛛を視界に収める。相変わらず、どっしり構えて動かず、八つの目が全てこちらを向いている様な錯覚を起こすほどの眼力の強さを放っている。あくまでも自分は攻撃をせずに見守るだけだ、とでも言っているかのように。


 だが、その油断が命取りなんだよ!


「ナパームボム」


 依然として俺の体は動かないが、俺の手から巨大蜘蛛にめがけて一直線に一つの炎が飛んでいく。一つの炎と思ってみくびることなかれ。


 この炎は消えない炎だ。

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