第115話 盗賊


「命が惜しけりゃ、無駄な抵抗は止めることだな」


 複数人の男に囲まれていた。身なりからして、盗賊か何かか? こんなことをするのはプレイヤーなのか? まあ、野生の盗賊もいるのだろうが、どこかプレイヤー臭がする。へー、こういうロールプレイでの楽しみ方もあるのか、盗賊プレイは面白そうだな。この楽しみ方もゲームならではだよな、俺のプレイもそうだが、やはり現実では出来ないことを出来るのはゲームの強みだよなー。


「おい、何をぼけっとしている! ちびったか! 命が惜しけりゃ金目の物を出せ! 一つ残らず全てだ、それにいい感じの防具もつけてるじゃねぇか。それも置いていきな、でなきゃ、キルしちまうぜ? それも剣でズタズタに切り裂かれてな」


 おー! なかなか板についてるなー、流石と言ったところか。んーどうしようかな、ロールプレイをしているんだからこちらもロールプレイをして、怯えた振りでもした方がいいのか? でもお金はいいけど装備はな、またあの爺さんの所に行かないといけないし、更にそっから一ヶ月くらいかかるからなー。装備は嫌なんだよなー。あ、ロールプレイと言えば、何も無抵抗に言うことを聞くだけじゃないか、むしろ、本来なら抵抗して当然か。よし、


「断る」


「はぁ? 何言ってんだお前、状況を理解出来ていないのか? お前が自分の意見を主張できる所じゃないんだよここは。もう、お前を生かすも殺すも俺次第なんだよ、いい加減分かって俺らに寄越せ」


 うわー、こりゃもう鉄板だな、称賛に値するレベルだわこれ。ここまでやられては、俺も引き下がれねえな、しっかりと最後まで全力で行って漢みせないとな。


「断る、どうしてもというのならば、自らの手で奪ってみろ」


「はぁ? おいおいおいおい、正気か? まじでこの状況を分かってないみたいだな、ガチでやるぞ? お前に死の恐怖と苦痛、そして絶望を教えてやるよ! 行くぞ、お前ら!」


 いやー、ここまで出来る逸材はなかなかいないだろうなぁ。本当に凄い、全く違和感がないし、淀みなくスラスラと言えてるからなー。


 それにしても死の恐怖と苦痛、そして絶望かー。俺も知りたいな、死の恐怖と苦痛はかなり味わったつもりではいるが実際まだまだなのだろうな、現実はこの世界の何倍もの威力だろうしな。絶望に関しては難しいよな、絶望して死を望む人もいれば、死ぬことがわかって絶望する人もいる。でもほとんどは絶望する暇もないんじゃないか?


 まあ、こいつらは甚振って殺そうとしてるからその点では絶望を与えられるのか。んーでも死ぬ時は一瞬だしなー。どうなんだろ?


 そんなことを考えていたら、いつの間にか接近され、いつの間にか斬りつけられていた。相手はボス合わせて六人、その内手下五人から、ただ今絶賛捌かれ中です。と言っても自動で斬撃障壁が発動して、ダメージ軽減されてるし、自動回復もあって、全く死ぬ気がしない。


 怖くも痛くも無いし、絶望もしていない。ちょっと期待していた自分がいただけに少し残念だな。それにしても何時までこいつら俺を斬っているつもりだ? 長くないか、もう終わって良いぞ。明らかに困惑してるだろお前ら。


「き、効かねえ! こいつには剣が効かねえぞ! ボス! どうします!」


「どうしますじゃねぇ! 攻撃の手を緩めるんじゃねぇぞ。恐らく何らかのスキル、道具の効果だろう、だが、そういうものは大抵長くは保たねぇって決まってんだ。相手が死ぬまで斬りまくれぇ!」


 うわー、もう本当に文句の付けようがないなー。完璧だな、本当にプレイヤーか疑問になるくらい凄い。自分だけ攻撃に参加してない所も追加点だな。


 それにしても、もう良くないか? かれこれ三十分くらい経ってないか? 逆にお前らも良くそれだけ斬り続けていられるな。全うにプレイしたら普通に強くなれそうなのにな。攻撃は痛くはないが少しくすぐったい感じで顔に出そうだから堪えるのに必死なんだよ。こっちの気持ちも汲んで、もうやめてくれ。



ーーースキル【斬撃無効】を獲得しました。


「条件を満たしました。【物理攻撃無効】を獲得しました。【刺突無効】【打撃無効】【斬撃無効】【衝撃無効】【振動無効】は統合されます」


【斬撃無効】‥斬撃によるダメージを無効にする。


【物理攻撃無効】‥物理攻撃によるダメージを無効にする。


 お?

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