第111話 情報屋


 ん? 誰? やっと見つけた? 俺って探されるようなことしたか? 強いて言うなら今し方悪魔を倒してきたくらいだが……


「すみません、どちら様でしょうか……」


「はっ、申し訳ありません! 私はサーフィンという、情報屋クラン所属のストロンと申します!」


 情報屋かー、え、俺なんかから情報買える? まともな情報なんてないと思うんだけど……ゲーム攻略ガチ勢でもないし、ただのエンジョイ勢に何を求めるというのやら……


「えーっと、それで情報屋の貴方が私に何の用でしょうか。私なんかから買える情報なんてたかが知れてると思うのですが……」


「いや、そんなことはありません! 貴方はこのゲーム屈指の実力者、それだけで、貴重な情報が眠っています。それに、前々回の大会では、圧倒的な勝利を納められました、貴方のその力の源や、普段のプレイ、そして、行きつけのお店などなど、聞きたいことは山のようにあります!

 今回は数少ない目撃情報を掻き集めて、ようやくここに辿り着来ました! ここでスキルをお集めになっているのですね! 私も是非通わせてもらいます!

 それでですね、まず第一にお聞きしたいのが……」


 や、やばい。こいつはやばい、どうしよ、今すぐそーっと離れたい。なんかもう止まらなくなってるし、目がいっちゃってる。この人は情報屋クランに所属していると言ってたし、応援が来たらもういよいよヤバイ、どうにかしてこの状況を打開しないと……


 でも、折角頑張って探してここまで来てくれたし、なんか尊敬の眼差しを向けられるから、少しくらいは報いてあげたいな。よし、


「あ、あの!」


「はっ、はい! すみません!」


「私、この後少し予定が詰まっていまして、あまり時間が取れないので、一つぐらいなら質問にお答え出来るかと……まあ、答えられるものでしたら、ですけど」


 よし、これなら大丈夫だろう。問題はちゃんと一つで切り上げられるかどうかだが、まあ、大丈夫だろう。俺には秘策がある。


「あ、ありがとうございます! 一つだけでも充分です! で、では、好きなモンスターはなんでしょうか! 教えて下さい!」


 え、好きなモンスター、だと? 俺はてっきり強さの秘訣は? とか、今のレベルは? とか聞かれると思っていたんだが……ってかさっき普段のプレイとかって言ってただろ。どういうことだよ。でも、それくらいなら全然答えてもいいな。正直どこまで答えるか、線引が難しかったからな。


「好きなモンスター、ですか。そうですね、ハゲタカ、ですかね。今までは興味も無かったのですが、最近好きになりましてね。もう愛着があったのです」


「愛着があった……ですか。その理由をお聞きしても?」


 んーこれは二つ目の質問に入れるか迷うが、まあ、ロスタイムみたいなもんか、これくらい聞いてやろう。


「そうですね、最近悲しい出来事がありましてね。事故、というか手違い、というかまあ、自分が悪いんですけどもね。もう今となっては二度と会えなくなりましたね」


「そうですか……以前はハゲタカさんと仲良くしていらっしゃったのですね、それで、今はもう会えなくなってしまった、と。それはとても悲しいですね、このような質問をしてしまい、申し訳ありません。今回は質問にご協力頂きありがとうございました。代金の方を支払わせて頂きます」


 え、お金くれんの、こんなことで。なんかめっちゃしんみりしてるけど大したことじゃないよ? 俺が進化させただけだからね? まあ向こうがいいならいいけどさ。


 あ、お金を渡すとストロンは何処かへ行ってしまった。あれ、情報屋ってこんな感じだったっけ? まあ、いいか。情報ってバラされるのかな? 向こうが情報を買ったんだから、向こうが好きに出来るってことだよな? 俺、今度からハゲタカ好きって思われるのか……まあ、しょうがないな。少し、嫌だけど。


 ってか俺の秘策発動できなかったな。少しやってみたかったのに……

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