第107話 殲滅


 一旦、状況を整理しよう。まず、俺は騎士爵を倒して、心臓を採取しようとしていた。その時に推定爵位、準男爵以上の悪魔が登場した。そして、生き残っていた騎士爵を強化した。


 え? どゆこと? いやいやいや、落ち着け俺、今俺がすべきことは、悪魔の殲滅だ。これに変わりはない、だからたかだか一体悪魔が増えただけの話だ。それが強かろうが俺が倒すしかない、そうでなければこの先これ以上強い敵に立ち向かおうだなんて、夢のまた夢になってしまう。


 だったら、今ここでやるしかない。絶望的な状況かもしれないが、最悪、死んでも神速で速攻戻って来ればいいよね? 多分。それで居なくなってたら、ハーゲンと気配感知で頑張るしかないか……


 いやいやいや、何死ぬ前提なんだよ。確かに死ぬ抵抗はないし、死ねば強くなれるから少しは死にたいっていう気持ちはあるけども、流石にここで死ななくてもいいんだ。後で、沢山死のう、だからここはしっかりと倒していく。


 幸い武器は出している。ただ、大勢、気持ちがまだ戦闘モードじゃない、これはすぐに切り替えられる。そして、各種スキルを発動、よし、もういつでも飛び出せる。


 常に、強い方の悪魔を警戒しつつ、気配感知で騎士爵亜種の行動を補足、強い方の悪魔をA、騎士爵亜種をBとする。


 Aはその場から動く気配はない、Bに戦闘を任せるつもりなのだろうか、それとも隙を伺って確実に俺をやるつもりか。Bは俺に向かって接近中、手から生えた凶悪さが増した鋭い爪で攻撃しようとしている。勿論先程よりも更に強く、速い。


 だが、俺はそれをギリギリの最小限で避ける。


 手には長剣一つ。心臓をくり抜く為に取り出した物だ。Bの皮膚は見た目から硬化しており、通常攻撃じゃ恐らく通りが悪い。だから、気を操作する。闘気を使う余裕は無いので、体内の気を無理やり剣に移動させていく。


 この間も常にBの攻撃を避け続けている。Aは未だ行動無し。上から下に爪を振り下ろすBの攻撃を回避すると同時に、剣で袈裟斬りを繰り出す。皮膚がまるでバターのように切れる。


 そのまま、何合かやり合うと、騎士爵は絶命した。


「ほーう、やりますねー。僕の強化個体までやっつけてしまうとは、お仕置きが必要ですが、今回は見逃してやりましょう、では」


 翼を広げ、Aが飛び立とうとしている。


 逃すか。


「【怒髪衝天】、【乾坤一擲】、【神速】」


「なっ、なんだと……」


 俺はAの首を撥ね、一撃の元に葬りさったのだった。


「ふぅ……」


ーーースキル【気力付与】

   スキル【抜刀術】を獲得しました。


【気力付与】‥気を武器や防具に付与することで、威力、強度を上昇させる。


【抜刀術】‥抜刀速度を上昇させ、抜刀による攻撃力を二倍にする。ただし、自動納刀され、技後硬直が発生する。




 無我夢中だった、何が起こったのか、記憶があまりはっきりとはしていない。ただ、目の前の状況から自分がしたことの推測はつく。


 取り敢えず、悪魔の心臓の回収をしよう。今回の戦い、学ぶことが多かった。それに、最後の戦いはとても調子が良かった……気がする。スキルではなく、本当にゾーンに入っていたのかもしれない。体が次どう行動すれば良いのか直感的に理解していたようだ。この状態に意識的に入れれば強いのだろうが、入らなくても勝てるようになりたい。



 これは、とても長い戦いになりそうだ。

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