第105話 岩山


 俺が今回倒す敵は、騎士爵の悪魔だ。場所は岩山、第三の街の西側だ。もう、さっさと行くか、


「ハーーゲンっ!」


 久しぶりだなー、最近はコイツに乗ることも少なかったよな。超特急で岩山に向かってもらうぜ。今回は騎士爵だからそんなに緊張する必要も、気合を入れる必要もない、と思う。だが、あの爺さんは油断はするな、と言っていた。その言葉の本当の意味が分からない。


 俺は以前、悪魔を倒した。それは準男爵だったという、ならば、今回の騎士爵はそれよりも弱いはず、だからそこまで気負う必要はないと思うんだが、まあ、いいか。実際に戦ってみて、ヤバそうだったら本気出せばいいだけの話だな。



 そんなことを考えていると、あっという間に岩山にたどり着いた。やはり、ハーゲンのスピードは素晴らしいな、そこら辺の馬車とは比べ物にならない速さだ。


 岩山に降り立つと、そこはとても足場が悪く、道と呼べるか怪しい道が続いていた。俺は気配感知を頼りに、道を進んでいく。あまり速度は出せないが、一歩ずつ着実に距離を詰めていく。気配感知は常に何かが存在していることを伝えており、それが恐らく悪魔なのだろう。


 それから程なくして、ようやく見つけた。悪魔だ。数は三体、今はまだそこそこ距離があり、向こうはまだ気付いていない。爺さんが油断するな、と言ったのは、必ずしも一対一とはならない、ということなのだろうか。確かに三対一ならば、苦戦するかもしれない。こちらも隠遁を発動して、不意打ちを試み、確実にいこう。このスキルならバレることはないだろう。


「……【隠遁】、【神速】」


 隠れた後は、速攻で近づいて、先制攻撃を決める! HPを闘気に変換し、更に魔力と一緒に練ることで生み出される魔闘練気を拳に集中させる、その拳で思いっきり、一人? 一匹の悪魔の腹を殴りつける。


「ギャアアアアア!!」


 殴られた悪魔は絶命したのだろうか。確実にやれているか、少し不安だ。しかし、今殴ったことで、隠遁が解けた、恐らく攻撃すると、解除されるようになっているのだろう。まあ、それもそうか。


 しかし、今は二対一、数的には不利だろうが、相手は騎士爵、一体ずつ倒していく。拳に気と魔力を纏いながら悪魔と戦っていく。対人戦ではお馴染みの、ゾーンと未来予知の上位互換、深謀遠慮を駆使して、相手の攻撃を躱しながら、反撃していく。


 だが、相手の攻撃が思ったよりも鋭く、威力が強い為、攻撃に絶対当たらないよう、余裕を持って避ける。そのせいで、なかなか反撃出来ていない。それに数も負けている。


 おかしい、コイツは騎士爵だろう? 何故こんなにも強いんだ? 知能的にいうと明らかに前回の準男爵よりかは劣っている為、騎士爵なのは間違いないと思うが、そうならそうで、この威力の強さはおかしい。前回の準男爵となんら遜色ない、いや、むしろこちらの方が厄介か? そのくらい、強いし、差がない。


 爺さんが油断するな、と言ったことはこういうことか。悪魔と戦う時は常に想定外が発動する、そう思っていた方がいいな。今回は騎士爵だからまだなんとかなるかもしれないが、これがこれより上の、それこそ公爵級の悪魔等の時に、起こってしまえば、笑えない。一瞬で命を失うだろう。今回はそれを俺に教える為の任務だったのだろう。


 まあ、いい。それでも倒すだけだ。


「【気力操作】、【明鏡止水】、【花鳥風月】」


 まだまだこっからだよな?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る