第104話 反撃開始


 俺は床が開かれた時、動じることなく、天駆を発動し、一歩分を踏み出し、空中ジャンプをする。そして、ある程度自由落下した後に、もう一度踏み出して、跳ぶ。これをもう一度行う。よし、同じ手にはもう引っかからない。これで優雅に着地できるはずだ。


 グギャ


「ってー!!」


 やばい、足やってしまったかもしれない。優雅に着地する為に片足だけ伸ばして、フラミンゴみたいに構えていたら、思ったより落下時間が長かったため、かなりの負担が足に集中してしまった。更に、地面にはフッカフカのマット。素直にうつ伏せの姿勢、もしくは仰向けどちらでもいいが、横になった体勢なら全く痛くないのだが、色気を出してしまい、そのせいで足を捻ったのだ。


 もう少し、感覚を開けて空中ジャンプしていれば、優雅に着地などと考えずにダイブしていたら、そして、マットのことを忘れていなければ。今回はいろいろ重なった結果、足を負傷してしまった。


 恥ずかしながら、自分は、回復薬も回復魔法も使用できないため、当分、このままでいくしかない。あー、体育の授業で足を捻ったことを思い出すな、その後の生活に支障が出まくってたなー。体のどこか少しでも不調だったら生活全体に影響が出るからな、現実世界では気をつけよう。


「お主、どうしたのじゃ? ふぉっ、ふぉっ、ふぉー、さてはかっこよく着地をしようとして、後方伸身二回宙返り三回ひねりをしようとして失敗したな? それは滑稽じゃのう」


 い、いや、まあ、カッコつけようとしたのは認めるが、それはただの自己満の為にやっただけだし、そんな良くわからん技を決めようとは思ってないぞ? ってか、そんな技できるのか? 空中で落ちながら後方……覚えてないけど、できるのか?


 「まあ、それは置いといてじゃ。お主がここに来たってことは、つまり、そう言うことじゃろう? とうとう使えるようになったのじゃろう、気を」


 おい、お前が言い出したことなのに、勝手に話題を変えやがって。まあいい、そうなんだよな、俺とうとう気を使えるようになったんだぜ!


「うむ、見ればわかるのう、全身から生命力が溢れておるわい。よし、ならば次は早速、悪魔を倒しにいってもらう」


 なっ、もう悪魔か? いや、まあそうか、これ以上準備していても仕方がないしな。悪魔は数多く人間世界に侵入しているはずだ。今すぐに少しずつでもいいから駆除していかないといけないんだな。


「なに、そう気張らんでもいいのじゃ。相手は騎士爵、最弱の悪魔じゃ。まあ、肩慣らし程度に倒して来てくれ、最近実体化した悪魔が暴れておるというのが報告されておるからの」


 なんだ、騎士爵かよ。俺が前倒したのが騎士爵か準男爵だっていう話だったからな。それくらいってことなら、強くなった俺ならまあ簡単そうだな。


「お主、その顔は騎士爵だからといって、油断しておるの? まあ、確かに騎士爵じゃ、じゃが、されど騎士爵じゃよ、油断するでない。それに、悪魔にも色々種類があるのじゃ、今回はそれを理解する為でもあるんじゃよ。

 それと、研究の為に、悪魔の心臓が必要なのじゃ。それを取ってくることを忘れんでおくれ。それが無ければ話にならんからな」


 悪魔の心臓か……何に使うのだろうか。でも、そうなると、倒し方もいろいろ工夫しないといけないな、爆散は一発アウトだしな。それも含めて肩慣らしなのか。まあ、気楽にいくか。


「今から討伐に行く悪魔は、人間に被害を今すぐにでも出しそうな様子じゃ、迅速に処理するのじゃ。居場所は既に送っておる、では、行ってくるのじゃ。これが我ら人類の反撃の狼煙じゃ!」


 あれ、この爺さんもしかして、悪魔を倒しに行かせる自分に酔ってる? あくまでも倒すのは俺なんだが。まあ、今まで、散々悪魔に苦渋を飲まされたり、家族をやられたりしたのかもしれない。もし、そうなら気合が入るのも当然か。


 よし、人類の為にも一肌脱ぎますか!


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