第102話 生命力


 暗殺ギルドに着くと、いつも通り受付をしている人に話を聞きに行く。


「すみません、気、についてご存知でしょうか。気を習得したいのですが、どうすれば使えるようになるのですか? 教えて下さい!」


「あれ? まだ、気を使えるようになってないの? てっきりもう使えるようになってるのかと思ってたよ。教会の二軒隣の爺さんの所に……

 あっ、もしかして、右に二軒行っちゃった? あー、それは災難だったね、大丈夫だった? あの爺さんは悪い人ではないんだけども、少し元気だからねー。

 ということは、まだ気を使えるようにはなっていないのか。なら、教会から左に二軒の所に行くといいよ。そうすれば、教えてくれるはずさ、気は必ず必要なものだからね。頑張って習得してくれ」


 なっ……まさかの教会から左に二軒とは……俺は本当にただ外れただけなのか。それに、この受付の人も本当は良い人で、ただ俺が勘ぐり過ぎただけか? 結局あのアグレッシブ爺さんのおかげで三つもスキル手に入れられたしな。


 まあ、受付の人に関してはこれから次第だろ。上手く付き合えればいい。それより、これでやっと気を手に入れられる! 早く、早く行こう。もう待ち切れないぜ。



「ここか……」


 到着すると、そこは……普通の家だった。左のアグレッシブ爺さんの家は、大きくて、豪華な家だった。まあ、中でも軽く戦闘ができるレベルだったからな。そして、研究室があるあの家は見た目はかなりボロい、古民家風だった。


 それらに比べると、何も特徴がない、普通には家だ。現実世界なら良くあるような、家を想像した時に真っ先に浮かんでくるものだ。ここで、本当に気を習得できるかどうか、一抹の不安を抱えながらその扉を開けた。


「ごめんくださーい……」


 扉を開けると、そこは、やはり普通だった。玄関があって、普通にフローリングの廊下が続いている。そして中から現れて来たのは、


「入れ」


 え、え? この流れでくると、確実に普通の、もうサラリーマンみたいな人が来ると思っていたのだが、まさか、まさかの髭がとても長く、髪も薄い、本物の仙人みたいな人が出てきた。


 こんな所で気を習得できるのか、不安だったが、それは一気に解消された。あの見た目なら絶対に気を使えるはずだろう。だが、同時に無愛想で、怖い、鬼コーチみたいや雰囲気が漂っていて、どんな厳しい修行が待っているのか、とても不安になってきた。


「どうした、早く入れ」


「は、はい!」


 やばい、これは本当に怒らせちゃいけないやつだな。多分ギルドから話は通してあるのかな? 通してなかったら多分ここまで入ってこれてはないだろうし、恐らく大丈夫……なはず。どうしよ、無事、習得できるかな……本当に不安になってきたぞ……


「お前は気を使えるようになりたいのだろう。ではまず瞑想をしてみろ、瞑想が出来るようにならなければ、気を使うなんて夢のまた夢だ」


 ん、瞑想かー。確かに瞑想と気は何か通ずるものがあるよな、こう、スピリチュアル的な意味で。でも、瞑想は慣れてるんだよなー、俺がどれだけ瞑想をしてきたと思っている。


「……っ!!

 (な、なんだこの生命力は!? 体中から溢れんばかりの生命力で満ちているぞ! それなのに、その力の波は非常に穏やかで、全く乱れていない。生命力は瞑想や、断食、それに滝行などの修行によって身についていくものだ。だが、これほどまでになるのに、どれだけの歳月を費やしたのだろうか。それに制御も完璧に近い。見た目はとても若いのに、ここまでの完成度、こいつはもしかしたらもしかするぞ……!)

 ふむ、ある程度は出来るようだな。だが、まだまだだな。毎日、瞑想をして、更に生命力を高めるのだ」


 くそーまだまだかー。一瞬、言葉が止まってたから、ビビってしまったのかと思ったが、俺の生命力を測るためだったのか。爺さんはどのくらいあるんだろうな、俺の何倍、いや、何十、何百も上なのだろう。それほどの風格だ。だが、瞑想をすれば生命力が高まるなら、これからも定期的にやっていきたい。いつか、あの爺さんを超えたいしな。



「では、今から気点穴を開ける」


 はい?

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