第97話 認証


 スキルの魔除けを使うと、いよいよ俺の仕事が無くなってきた。モンスターはかなりの数いるが、人間、それも盗賊ともなると、一回の移動に良くて一、二回遭遇すれば多い方だろう。


 だが、それすらももう来てしまった今、暇である。少し横になっても良いだろうか……



「……はっ!?」


 まずい、うっかり寝てしまっていた。こんな揺れる馬車の上で寝れるわけないと思っていたんだが、思いの外、太陽の光が気持ち良くて、ウトウトしていたようだ。


 どのくらい寝ていただろうか、あとどのくらいで目的地につくのだろうか。これはやばいな、依頼中に寝てしまうとは……


 唯一の救いは、ここが馬車の上で誰にも見られていないということだろう。


 俺が一人でめちゃくちゃ焦っていると、いつの間にか目的地に到着していたようだ。馬車から降りると一通り感謝の言葉を述べられて解散した。


 そういえば、あの盾使いから妙に見られていた気がするな。いや、気のせいか俺が見られるわけないし、見る理由もない。それにしても、盾が少し大きくなっているような? なんか強そうだな、今度はもう勝てないかもしれないな。俺ももっと強くならないといけないか。


 よし、ギルドにささっと帰って報告して、悪魔の話を聞きに行こう。もう、なんだかんだずっと爺ちゃんの話聞けてないからな。もう、聞きたい、聞かせてくれ。寄り道は勘弁だ。



 依頼が終わった後、俺はギルドに着いた。依頼の達成を報告すると、


「おー! お疲れ様! 依頼はどうだったかな? 実は今回の依頼、達成すると、ランクアップできるんだよね。つまり、ランクアップ試験みたいなものだったんだよね。それで、君は見事クリアしたから、晴れてBランクだ! おめでとう!!」


 え、ランクアップ? 何それ、聞いてないんだけど……


 なんでも、俺がもう一つ依頼を受けると、ランクが上がるという所まできていたらしい。でも、それで微妙な難易度の依頼を受けられても面倒くさくなるらしいから、ちゃんと達成したら、ランクが上がる依頼しか貼ってなかったらしい。


 まあ、俺はその中でも一番ましな依頼を受けたらしい。でも、それは冒険者ギルドも兼用の奴だったらしく、それであの盾使いもいたらしい。あの盾使いも無事ランクアップしたことだろう。


 うん、だいたい分かった。やっぱりこの受付の先輩は厄介だ。俺にしっかり仕事をこなさせようとしてくる。これはここのギルドにくるのも考えものだな。依頼を受けていい時だけにしないとな。


 Bランクになったことで色々できるようになったらしい。詳しくは聞き流したのでわからないが、それでもより強いモンスターと戦えるし、より重要度が高い護衛とかも受けられるらしい。まあ、護衛は当分いいか。


 よし、いよいよだ。ようやくお爺さんに悪魔の話を聞ける。クエストはまだ表示されてて、当然クリアにもなってないし、次のクエストが出てもない。


 受付の人の話によると、教会の左右じゃなくて、奥に二軒の所らしい。俺が右側に二軒いってたらどんな爺さんがいるんだろうか。ってか確実に間違わせに来てたんだなあの受付の先輩。こんなの分かるわけないだろ。



 着いた。着いたのはいいんだが、めちゃくちゃボロい。普通にお化けとか出てきそうなくらい、ボロいし、この街並みには想像もつかない。だが、入るしかない。俺の初クエストでもあるのだ。しっかりと楽しみたいし、クリアしたい。


「よし、ごめんくださーい……」


 扉を開けると、そこはいかにも古民家風のこじんまりとした玄関だった。人が住んでる気配も全くない、生活感がまるでないのだ。本当にここにいるのか?


『悪魔討伐を確認、ゲート解除』


 ガコッ


「え? うわー!!」

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