第94話 出逢い②


 俺は再び暗殺ギルドに到着した。


「あのー、悪魔の話を聞けると聞いて行ったのですが、お爺さんに勝負をふっかけられました。どういうことでしょうか、もしかして、私を騙しましたか?」


「え? 騙す? 何のことかな? あ、もしかして、教会の二軒隣としか言ってなかったってけ? それはごめん! 僕の中ではその印象だったからね、言いそびれちゃったよ。勝負をふっかけられたということは、あの爺さんかー、今でも元気にしてた? いやー、昔っからああいう性格でねー、本当は良い人なんだけどねー」


 あ、こいつ絶対敢えて言わなかったやつだな、全力でしらばっくれようとしてる。まあ、いいか、間違えた俺も俺だしな。向こうも出来たらぐらいの感覚だったのだろう、それにしても、俺を向かわせることに何の意味があったのかは分からないが……


 まあ、それを含めて切り替えよう。次は本来の目的である、悪魔の方だ。もう一度確認しておこう。


「悪魔の話を聞くのは、教会の左に二軒でいいんだよな?」


 確か俺が言ったのは右側だったはずだからこれで間違いない筈だ。


「ん? いや、違うよ。あのお爺さんは、教会の裏側に二軒行った所にいるよ。間違えないでね? あ、それと、明日は護衛の任務があるだろうから、今日はもう休むことをお勧めするよ、中々ハードな依頼だからね。あと、明日は冒険者ギルドの方からも派遣されるから、仲良くやるんだよ? 暗殺ギルドの一員としての自覚を持って行動するんだよ」


 いや、ちょい待て、情報量が多すぎるぞ。まず、悪魔の爺さん、教会の裏側に二軒ってどういう事だよ。もう、これは間違わせに来てたってことだよな? もしかして、それ相応の実力があるか試したってことか? くそ、してやられた感が凄くて、嫌だな。


 あと、明日護衛があるのはすっかり忘れてたぞ! 受付の人に言われて何となく言われて受けたから、存在感ゼロだったわ。それに、冒険者ギルドからも来るし、仕事がハードってもう、どういうことだよー。仲良くしつつ、自覚を忘れないようにって……


 それにこの人、この情報量を一気に叩きつけることで、相手を疲れさせて、二軒のことで責められないようにしてるような気がして、気に食わない。この人は中々のやり手なのかもしれないな、認識を改めた方がいい。今までは気さくなお兄さんのような先輩だったが、今では一癖も二癖もある、面倒くさい先輩にジョブチェンジしました。


 なるべく面倒ごとを引き受けさせられないように気をつけないとな……


 それに、なんか今日は色々と疲れたな。これもあいつの言いなりになっているようで癪だが、今日は休もう。明日に備えないと……




 おはようございまーす、やっぱ寝起きは欠伸が出ちまうよな。それより、なんでこんなに早くからいるかと言うと、依頼だ。依頼が朝早くから出発して、次の日の昼頃に到着予定らしい。なんの気無しに早くログインしただけだけど、危なかったぜ……こういうことを先に言って欲しいぜ、まあ見てない俺も悪いが。


 依頼場所の公爵領地に行くと、すでにそこには一人の女性がいた。恐らく、この人が冒険者ギルドから派遣された人だろう。仲良くしないとな……


 ん? どっかで見たことがあるぞ、この人、既視感がとてもある。確か……いや、出てこないな、諦めよう。それよりこういう時自己紹介とかするべきなのだろうか、分からない。気まずい、非常に気まずいぞ。二人とも沈黙を貫いているから、何も生まれない。依頼人よ、早く早く来てくれー!


「お、そろっているようですね」


 来たー! よし、これは流石に依頼人だろ、だったら依頼内容の説明とかあるよな? うん、してくれ、さっさとしてくれ、もう、俺がもたないぞ。


「早速、依頼を説明したいのですが、その前に、お二方は自己紹介等なされましたか? 短い時間ですが共に仕事をする上で、少しでも信頼関係を築いて頂ければ、こちらとしても安心ができます故、されていないのならば、是非して下さい」


 え、えー!? そりゃないぜー信頼関係いるー? 一度きりのタッグだぜ? まじかよー……この雰囲気を向こうが察したのか?


 だが、ここはいくしかない。男として何としてでも先手をとる!


「長剣使いのライトと申します。よろしくお願いします」


 よし、短いが必要なことは言えたはずだ。


「私はハク、盾使い、……よろしく」


 なんとも簡潔な自己紹介だな。俺よりも短かったぞ。それに、盾使いか、そういえば、前のイベントにも盾使いがいたような……ん?


「あっ!」

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