第95話 護衛


「あっ!」


 そうだ、どこがで見たことがあると思えば、前回イベントの決勝戦で戦った相手じゃないか、装備も変わってて気づかなかったぞ。まあ、そんなに印象なかったし、すぐ終わったから、装備変わってなくても、分かるか怪しいけどな。


 俺が声に出してしまうと、向こうはぺこりとお辞儀をしてきた。向こうはとっくに気づいていたのだろう。まあ、いい、そんなに大したことじゃないだろう。


 自己紹介が終わり、コミュ障かどうかは知らんがとにかく外交的ではない俺と、同じオーラを纏った盾使いさん? の間には勿論、気まずい空気が漂っている。


 そうして、お互い膠着状態が続いていると、救いの手、依頼主がやって来た。むしろ、今までどこに行ってたんだ? 依頼主が俺らの元にくると、


「自己紹介は済んだかな? では依頼内容を説明するとしよう。依頼内容は簡単だ、私たちが目的地に着くまでの間、私たちの安全を確保して欲しい、ただそれだけだ。それ以外は特に何も要求は無い。しっかりと任務を果たしてくれ。質問、要求等は一切受け付けない。

 また、私達が乗る馬車の中に女の方が、外には男が配備するように、女は盾が、男は剣が得意と聞いている。自分の役割をしっかりとこなすように、言うまでもないだろうがね。

 よし、説明はこれくらいだな。早速、出発しよう」


 急に来て、早口で説明されて、すぐ出発するらしい。どんだけせっかちなんだよ。まあ、俺も早く終わらせたいからな。気にせずに行こう。


 ってか、それより役割分担だ。盾使いが、護衛対象の側で守る役割で、俺は、恐らく敵を倒すのを任されているのだろう。これを二人だけで……俺らが信頼されているのか、依頼主がケチなだけかわからんが、もう、ウダウダ考えても仕方ないな。馬車に乗る、乗り込むのではなく、上に乗る。インじゃなくて、オンだな。



 馬車が出発した。上に乗っていると、風も当たるし、景色も見渡せるしで、案外楽しいし、居心地もそんなに悪くない。揺れは酷いし、座る場所も地面とほぼ変わらないんだけど、気にしない、気にしないぞ。


 俺の仕事は近寄ってくるモンスターの駆除だな。たまに盗賊っぽい奴が現れるけど、気にせず、ギロチンを使う。いちいち降りて戦うなんてしんどいし、降りたらまた登らないといけないからな。視線だけで殺せるなんて便利すぎるぜ。


 それでも確率だから死なない時もあるけど、その時は、


「【ファイヤーエクスプロージョン】」


 これで、爆殺する。うん、今日も平和だな。個人的には前戦った爺さんみたいな、防御シールドみたいなのを張って、後は休みたいんだが、まあ仕方ない。こればっかりは、今まで自分が死ぬか、相手を殺すかしか考えてなかったからな。たまには人を守るのもいいだろう。


ーーースキル【魔除け】を獲得しました。


【魔除け】‥一定時間、モンスターを近づけなくする。熟練度に応じて効果時間上昇。


 お、スキルゲットした。これは便利だなー。これを使ったら少し昼寝でもしようかな? でもこれって盗賊とかは近づいて来そうだなー。とりあえず使うだけ使っとくか。


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