第93話 食い違い


 そう、もう既に通ってたんだな、視線が。


「【ギロチンカッター】」


 俺がそう唱えると、爺さんはパタン、と地面に倒れた。一応、この即死攻撃は確率なんだが、修羅の道とか、称号のお陰で成功率がかなり上がっている。まあ、外しても決まるまで撃つつもりだったけどな。


「よし、これで完了だな」


 俺はそう言って、爺さんに触れる。でも、流石にこのままだと情報も何も聞けないので、復活させる。


「【死霊魔術】、蘇生」


 爺さんは、驚いたように目を開く。自分の体をペタペタと触りながら状況を確認している。何が起こったのかまだ理解出来ていないようだ。それもそうか、戦っていたはずなのに、気づけば自分が寝転がっているのだからな。


 死んでから、生き返るまでの記憶はまるでないからな。気付いたら、朝起きるかのように目を覚ます。これは何度も俺が経験していることなので同じ筈だ。NPCは違うかもしれないがな。


「お主、一体何をした?」


 爺さんが徐に尋ねてきた。かなり気になっているようだ。自分が優勢だったはずの戦いが唐突に終わってしまっているのだからな。


「すみません、少し汚い手を使わせて貰いました。どうしても貴方に手が届かないので、スキルを使い一旦、殺したのです。そして、その後復活させました。私のスキルでね」


「な、何? 一旦殺しただと? ふっ、ふはははは! お主一体何者じゃ? まさか儂を殺すとはな、こんなこと初めてじゃわい! 本来なら儂に決して触れられないはずだから、日暮れまで儂の攻撃を耐えれば良かったんだがのう。まさかまさかじゃわい。

 儂のスキルはどんな攻撃をも防ぐ最強の盾であったはずだが、どうやって儂を殺したのじゃ? いや、良い。答えを聞いてしまっては味気ないからのぅ。儂もまだまだということじゃ。伸び代じゃのう。

 いかんいかん、話が逸れてしまったな。良いだろう、お前の力は証明された。其方には然るべきものを授けよう。それに、今回は見事、儂を触ることができたからのう、特別に合計三つの力をお主に与える」

 

 ん? ちょっと待てよ? 爺さんの話が長かったから危うく聞き逃すところだったけど、力を授ける? それも合わせて三つ? どういうことだ? 俺はただ悪魔の話を聞きにきただけだぞ? あ、もしかして、悪魔に効く力をくれるってことか? そういうことか、そういうことだな。なら、いいや。


「ん? どうしたのじゃ? では、この中から好きなものを三つ選べ。それをお前に授ける」


 そう言って巻物が渡された。開いてみると、急にステータス画面のようなウィンドウが現れた。そこには、ずらーっと、スキル一覧のようなものが並んでいた。それもほとんど四字熟語のようだ。


 ほうほう、これで自分を強化しろってことか。なるほど、でも、かなり量があるな、じっくり考えるか。


「厭離穢土、深謀遠慮、花鳥風月、この三つにするか。中々使えそうだしな」


「ほう、それにするのか。面白い選択じゃのう、じゃが、それに頼りきってはだめじゃぞ? 自分を研鑽することを怠ることなかれ、そうすればお主はより高みを目指せるはずじゃ。では、さらばだ。いつか、また手合わせをしよう、その時はお互い、より強くなっておるじゃろう。クックック、楽しみじゃわい」


 いや、俺は楽しみじゃないぞ? 今回もほぼズルしたようなもんだし、地力では負けてたよな? いや、俺も発動してないスキル他にもあったからもしかしたら? いや、面倒臭いな、もう会わなければ済む話だしな。


 それよりも、一旦ギルドに戻ろう。


 これは話が違う。





ーーースキル【厭離穢土】

   スキル【深謀遠慮】

   スキル【花鳥風月】を獲得しました。



「【未来予知】は【深謀遠慮】に統合されます」


【厭離穢土】‥全MPと全HPを消費して、一つ対象を選び、そのHPを全損させる。


【深謀遠慮】‥数手先の未来まで見ることができる。相手との実力差によって、数が変化する。


【花鳥風月】‥相手のSTR、AGIを一定時間0.5倍にする。効果時間は熟練度に応じて変化する。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る