第85話 死刑宣告
「やっべぇ……」
やってしまった。まさか人だとは……なんでこんな所に人がいるんだよ。それになんでよりによって今来るんだ? 俺が攻撃を受けている時に助けに来るならまだ分かるが、一通り終わったこのタイミングで来るってことは一部始終見てたか、それともただの偶然か……
ーーー称号《加害者》を獲得しました。
《加害者》‥殺意なく、誤って人を殺す。NPCからの好感度が減少。被害者が許せばこの称号は消える。
うわー。なんか変な称号貰っちゃってるなー。今までも沢山変なのだったが、今回のは更に変で、面倒臭そうなにおいがする。これも嗅覚強化の影響か?
……まあ、いいや。特にあって困るもんでもないし、NPCの好感度が少し下がるくらいなら気にしない。あ、ギルドのメンバーから白い目を向けられるのは嫌だなー。被害者が許せば、ってことはもしかしたら直ぐにでも許してくれる可能性もあるし、時間と共にもういいやってなる可能性もある。
もう、気にしててもしょうがないからな。次へ進もう、第三の街へ。
そこからは特筆すべきモンスターは現れなかった。現れるモンスターはいたはいたが、俺を殺せず、俺が殺せないことを確認次第、爆散させた。爆散させるの楽しい。
そんなこんなで、気づいたら火山地帯が終わり、もう直ぐで第三の街、という所までたどり着いた。ハーゲンで一瞬でいくのもいいが、こうやって歩いて行くと、達成感もあっていいな。死ぬ予定がある時はなるべくこうしよう。
ようやく門が見え出したところで、俺は一人の女性が早歩き、いや、そこそこのダッシュでこちらに向かっているのが見えた。
あれは、もしかして俺が爆散させた女性だろうか。うん、間違いないな。それであの表情、このスピード、間違いなく俺を探しにいってるだろう。ここで見つかるのは避けた方がいいな。時間が解決してくれるだろうし、最悪解決しなくてもいい。ただ、面倒なことは勘弁したい。
よし、隠れよう。幸い、門に続く道はあるが、その周りは森になっている。木の裏に隠れよう。
木の裏にいく。隠れるにはどうしたら良いのだろうか。まあ、いつものように、集中と瞑想を使おう。もう、なんなら明鏡止水まで使っちゃおう。最適な行動をとってくれるはずだ。
ーーースキル【潜伏】を獲得しました。
【潜伏】‥隠れる。他人、モンスターから視覚による認識がされづらくなる。音、匂いが軽減される。
お、これは良いスキルを手に入れたぞ。明鏡止水のおかげだろうか。よし、気配感知で場所を探ろう。お、順調に道を真っ直ぐ歩いているな。
よしよし、そのまま真っ直ぐに進め、そうだ、いいぞ、その調子だ。よし、俺のいる場所を通り過ぎたな? だが、ここで出るのは怪し過ぎるし、何より見つかってしまう、もう少し様子を見よう。
ん? 止まった? どうした、進め、進め、お前の先に俺がいるはずだろう? 進め進めー!
まずい、こちらに向かって来た。いや、別にまずくはないだろう。ただ、忘れ物をしただけなんだろう。流石に俺に気づくはずがない。潜伏してるしな。
おい、なんで俺が隠れてる場所で止まるんだ? あ、物を落としたのかな? それはしょうがない、よしよし、探せ探せ、そして行け!
……全然どこにも行かない。かといって俺が見つかった訳でもない。ずっと俺が隠れている所の延長線上の道でウロウロしているようだ。本当に何か落とし物でもしたのだろうか。
あ、やばい、こっちくる。いや、まだ終わりと決まった訳じゃない。現に、こちらに一直線というよりは、なんとなくでこちらに来ているように見受けられる。よし、こっちには何もないぞー来ても無駄だぞー。
よし、まだ気付いてない、気づいて……
「ねぇ貴方、貴方は私を殺した方ですよね?」
なんだよ、その死刑宣告。
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