第66話 イチゴ


 私はイチゴ、このNSOで魔法使いをしていますの。今日は、第三回イベントの決勝の日ですわね。一回戦は相手も魔法使いでしたが、なんとか勝てましたわ。良かったですわ。まあ、私もそれなりにプレイして強くなってるので、今回は本気で優勝も目指してますの。


 でも、次の相手はよく分からない相手ですわ。予選では終盤に、迫りくる多くの敵を一人で倒しまくって堂々の決勝進出を果たしたので、観客は大盛り上がりですの。


 そして、一回戦目も呆気無く相手を倒してしまいましたわ。その相手プレイヤーは第一回から決勝進出してるほどの凄腕ですのよ? レベルも高いのですが、プレイヤースキルもかなり上手ですわ。あの、薙刀を使わせたらあの人より上手い人は少なくともこのゲームではいないのではありませんの? まあ、そのくらい上手ですのよ。


 でも、その人相手に圧倒的に勝ちましたのよ。観客もとても沸いてたし、私もゾクゾクしましたわ。そんな人が次の私の相手。一応私も第一回から決勝進出してますのよ? それなりに強い方ではあると思っていますわ。


 ただ、今回の敵は謎が多すぎますの。今回のイベントが恐らく初出場、少なくとも決勝には出ていませんわね、それに武器も何も持っていませんわ。もしかしたら素手専用のスキルとかを持っているかもしれないですが、武器を持っているのに素手なんてことがあったら、本当に何者って感じですわね。


 そして、一番の謎はその装備ですわ。この一番上のレベル、しかも決勝にまで来れるような人が初期装備のままだなんて、ふざけているか、そういう縛りプレイなのか、それとも相手を舐めていますの? まあ、全く検討はつきませんが、あの装備でここまでくるなんて考えられませんわ、少なくともどこかで躓くはずですもの。上位のプレイヤーと普通に戦えてるだけでも異常ですわ。


 私はこのイベントで勝つためにかなりの努力をしてきましたわ。何時間もログインしたし、強い装備を整えるために何度もモンスターを倒しましたわ。スキルも鍛えて、かなり強くなったと思いますの。


 私には勝たないといけない理由がありますの。


 このイベントで一位になった人には素晴らしい賞品がついてきますの。もちろん賞金もですが、それ以上にいい待遇が付いてきますわ。


 それは、一位を取ったことがある者のみがいける楽園。そこは、統合型リゾートとでもいうのかしら、結局日本ではカジノは禁止されることになったのですが、カジノやテーマパーク、その他にもそこでしか買えないとてもレアなアイテムが売っているショップなど様々ですわ。


 プレイヤー達はここに入るために毎日頑張っているといっても過言ではありませんわね。もちろんそこではお金も沢山かかるから、モンスターを倒したりしてお金を稼がないといけませんわ。ですからずっとそこに入り浸るわけにはいきませんが、それでも遊べることには変わりはありませんわ。


 そこに入るには条件がありますの。一つは今後特別なものを除くイベントの参加不可能。二つ目はゲームをやめないこと。この二つらしい、ですわ。後者は勿論人間だから用事がやあってログインできないこともありますが、三ヶ月ログインがないと運営から通知が届き、半年ログインがなければ、そのリゾートには入れなくなりますの。


 まあ、優勝するくらいの人はなかなかの廃人ですから、普通に毎日ログインしてるでしょうけど。


 そして、理由というのが、第一回イベント優勝者がなんと私の姉ですの。私のお姉さまは何でもできて、容姿も整っていて、本当完璧ですわ。そんなお姉さまに憧れていますの。そんなお姉さまが優勝した時は本当に自分のことのように嬉しかったですわ。


 ただ、少し悔しくもありましたの。いつもお姉さまの背中を追い続けていますが、やっぱりその背中は遠い。あらゆる面で劣っているけど、このゲームという場ではお姉さまに勝てると思っていましたが、甘かったですわね。


 お姉さまに追いつく為、そして追い抜く為にも絶対にこのイベントでは優勝しなくちゃなりませんの。


 前回のイベントでは決勝で二刀流の剣士に負けてしまいましたが、今回はちゃんとどんな武器種を使ってこられても大丈夫なように対策をしていますわ。絶対に勝つために、今回で必ずお姉さまに追いつきますの。


 相手が素手で未知数な部分も多いですが、こんな所で負けてなんかいられませんわ。私の目標はこんな所じゃありませんもの。


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