第65話 二戦目


 その試合の決着はあっという間だった。


 俺がスキルを使って急加速して相手に接近し、相手の間合いの更に内側へと踏み込む。


 すると、相手は密着した体勢を嫌ったのか、距離を取ろうと後ろに下がろうとした。そこで、相手が下がるのに合わせてパンチを叩き込んだ。蓮撃の効果も発動したみたいで、それで倒し切ることができてしまった。


 俺が一息ついていると、一瞬の静寂の後、割れんばかりの歓声が起こった。一瞬何事かと思ったが、ギリギリ理解することができた。恐らく下馬評で大穴だった俺が、まさかの勝利を収めたからだろう。


 それにしても相手はそんなに有名なプレイヤーだったのだろうか? 呆気無く終わらせてしまったのだが。まあ、いいか。これは勝負だしな、負けても文句はないだろう。


 気づくと俺は試合が始まる前の場所に戻されていた。なんとか初戦は勝つことか出来たが、次の試合からは相手もより強くなってくるのだろう。気を引き締めねば。


 俺は他の試合を観戦していた。やはり、上位層なだけあってかなり見応えがある。派手な魔術、魔法の打ち合いだったり、素晴らしい剣戟の応酬、さらには複数の武器を使ったり、俺見たく一撃で終わらせている人もいる。やっぱり決勝は一筋縄ではいかなそうだな。


 うん、ワクワクしてきた。これを求めてたんだよなー、俺の死が無駄だったのかどうなのかがいよいよ明らかになる。俺の進んできた道が間違いじゃなかったらこれからも死ぬし、無駄だったら……ヤケクソで死にたくなるかもな。


 結局死ぬなら、自信持って死にたいし、頑張ろう。おっと、もう次の試合のようだ。俺もなんだかんだ夢中になって見ていたようだな。次の試合は誰だろうか。



 目の前にいたのは魔女風の女だった。



 魔法使いなのだろうか。流石にそうか。ってかこれは完全にコスプレなのでは? と思うけど口にはしない。怒られたら怖いからな。


 さっき試合を見てたときは、装備まで注目してなかったからな、どの試合の人だったかはっきりはしないが、恐らく魔法を撃ち合ってた試合だろう。あれに勝つことが出来たとなると、相当な脅威だな。


 前回は武器を抜かず、素手でいけたが、今回は武器を抜く可能性があるな。


「3、2、1、」


スキル集中を発動する。前回と同じように初手から飛ばしていきたいが、流石に対策を取られていると思う。一旦様子見をしよう。でも、一応、ダッシュする素振りを見せておく、


「GO!!」


 すると、相手は自分と俺との間に大量の範囲魔法をばら撒いていた。恐らく試合前から予想をしていたのだろう。それを考えても恐るべき効果範囲と威力と速度だ。これは近づくのすら難しいのか?


 いや、待てよ? 見た目からして相手が使ったのは雷の魔法もしくは魔術のはずだ。俺、電撃無効持ってたよな? あれ? これ俺やっちまった?


 いやいやいや、流石にまだ勝てると決まったわけではないし、相手が他の属性だって使う可能性は大いにある。ただ速度重視で撃ってきただけかもしれない。


「ウォータージェイル!!」


 やばい! 何か使われたぞ! ってなんだこれは? どこからともなく俺の周りから水が出てきて俺を包みこんでいく! これは水の牢獄ってことか! このまま窒息させるつもりか!?


「……」


 あ、俺、潜水あるじゃん、こんな所でも使えるんだな。


 ってか相手は水と雷の二つを使うようだ。確かに水で濡らして雷を当てるのは相性がよく、威力も絶大だろう。俺、以外はな。


 うわー、なんか完全に申し訳ないな。完全にメタったみたいになったし、まあ、しょうがないよな。うん、しょうがない。次に期待しよう。


 相手はそのまま試合が終わるまで他の属性を使うことはなかった。そして俺はそのまま一方的に殴り倒してしまった。


「なんか、ごめんなさい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る