第64話 初戦


 スケルトンと色々練習をしていたらいつの間にか決勝の日を迎えてしまった。決勝トーナメントは予選とは違い一対一で行われるようだ。A〜Lの十二グループの上位三名が出場するため、合計で三十六人がこの決勝に参加することになる。


 俺は一応Dグループだったが、どのグループから勝ち上がってもあまり関係のないようになっている。初戦で同じグループ内で当たることは避けているため、予選と同じ構図になることは当分ないようだ。


 それにしても、俺は盾使いに対して対策を講じてきたわけだが、これでは当たるかどうかも分からないな。盾使いは負けることは殆どなさそうだが、逆にどうやって勝つのかがきになるところではある。


 もしかして、予選とは全く違う戦い方をするのかもしれない。そうなってくると、それはそれで楽しみではある。


 お、早速決勝トーナメントの第一戦目が始まるようだ。組み合わせは試合が始まる直前に発表されるらしい。そうすることで、事前に対策することを防いでいるのだろうか?


 だが、このタイミングで誰もが初めて知るのだから、もしかしたら俺が最初に呼ばれ……


「た」


 呼ばれるかもしれないが、流石にないだろうって言おうとしたら、呼ばれた。呼ばれるというか、スクリーンに大々的に映し出されている。決勝トーナメントに参加しない人達も見ているが、何故か盛り上がっている。ってか沸いている。何故だろうか。俺の対戦相手がめちゃくちゃ有名な人とかだったりするのだろうか?


 そうなると、相手は強そうだな。気を引き締めていかないと。通りすがりに誰かが話しているのを聞いたんだが、この試合で賭けもできるらしい。それによる興奮もあるのだろう。


 でも、俺のオッズは相当高いのではないか? せめて俺に賭けてくれてる人の為にも頑張ろう。うん、いるよな? 全員向こうとかはやめろよな? 俺頑張るから。


 いよいよ、正式に呼ばれたようだ。目の前にウィンドウが現れて準備完了のボタンを押す。すると、視界がどんどんホワイトアウトしていき、気づくとそこは……



 闘技場のような場所だった。いや、コロシアムといった方が正確だろうか。屋外の建物で周りをぐるっと観客達に囲まれている。物凄い熱気だ。これは緊張するなー。でも、どうせ死なないから大丈夫大丈夫。冷静に相手を分析しよう。


 相手も先ほどの俺と同様この空気感にら飲まれているように感じる。まあ、気持ちは分かるけどな。武器はー、なんだあれは、薙刀? そんな感じの武器だな。槍のように長いが先端に刃がついている。


 防具はある程度防御力を確保しつつ、機動性も損なわないようにした装備といったところか。良く言えば堅実、悪く言えばどっちつかずって感じか。まあ戦えば良いか悪いか分かるだろうな。


 あ、今相手、俺の装備を見て少し戸惑っている。流石にこのクラスになると馬鹿にはしてこないか、どうやってこの装備で勝ち上がって来れたのかに意識が働くのだろう。警戒されるのは良くは無いが、どちらにせよされるのだから気にせずにいこう。


 この試合のルールは相手のHPを全損させることだ。いわゆる死ぬまでってやつだ。ただ、予選と同様、デスペナルティは無い。まあ、あったらおかしいか。思い存分やりあって本当に強いのがどちらか決められるからこのルールは良いのだろう。


 ただ、俺はHPが10なんだよなー。まあ、負けるつもりはないが。お、もうすぐ始まるようだな。カウントダウンが始まる。


「3、2、1、」


 いよいよだな。精神を落ち着かせ、研ぎ澄ませる。始まった瞬間が最も重要だ。先手を取ることで大きな有利に繋がる。


「GO!!」


 今だ!


「【神速】っ!」


 俺はスタートの合図とともに、武器も持たず相手の元へ全速力で走り出した。

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