第58話 ゾーン
気配感知を取得した俺はすぐさま反応のある方に向かうと、そこにいたのはなんとプレイヤー二人組だった。
バトルロワイヤルということで、必ず一対一にしかならないと無意識に思っていたのだが、上位三名まで決勝に勝ち上がることが出来ることを考慮すれば確かに共闘もありえるのだろう。それが、信頼出来る仲間であればの話だが。
俺は息を潜めて二人のプレイヤーの背後に隠れている。今はまだ二人とも気を抜かずに警戒をしているのだ。二人とももしくはどちらか一方でもが気を緩めた瞬間に攻撃したい。
それぞれの得物は一人は片手剣と盾、もう一人はメイスだな。相性が良いのかと言われれば微妙な気もするが片手剣が相手をあしらっている間にメイスが大打撃を与えるという感じなのだろうか。ならば先に狙うのは片手剣からだな。不意打ちのアドバンテージがある状態で倒しきりたいところだ。
もう、そろそろ移動しそうだな。移動する瞬間は移動することに意識が向くだろうからそこを狙っていく。よし、今だ!
「うわぁ!」
よし、まずは背後からの思いっきりパンチだ。そこそこのダメージは入るだろうがそれでもそこそこである。倒し切るには至らない。
「【筋力増強】!!」
スキルを発動する。攻撃を出来たのは片方だけでまだ倒せていないから二人に囲まれてしまっている。でも、このくらいの勝つか負けるかのギリギリの戦いをしてみたかったのだ。全力で勝ちにいく。
まずは予想通り、盾持ちの剣士が俺に襲いかかってくる。剣をギリギリで全て躱していく。その時にメイスの存在も忘れない。常に意識の半分はメイスのことを考えておく。
それでもかなりジリ貧なようだ。思ったより剣士がしぶとく、メイスがやっかいだ。連携が取れており、剣士がピンチに陥ってもメイスのフォローによって立て直される。メイスのちょっとした牽制にも反応しないといけないため、やはりやりづらい。
ここでほんの一瞬、新たな手札を切るか考える。皆も手札を隠しながら戦っているのだ。俺だけそんな甘えたことしてられない。しかもこんな所で負けてるようじゃ俺は全然強くなってないってことじゃないか。それは嫌だ、あの苦しい死の毎日が無駄だったとは言わせない。
集中しろ、もっと集中しろ、スキルに任せるのでは無く自分でより感覚を研ぎ澄ませろ。未来予知も一手先だけではなく、数手先まで見えるくらいに。
お、相手の二手先が見えるようになってきた。ということはこれをさせないように立ち回る。例えば斜めの切り下ろしの後に切り返す攻撃なら、切り下ろしの次点で切り返しが出来ないように、盾側に回避する。
一つ一つの細かい避け方で、相手が嫌がることをすることで戦況を徐々に有利にしていく。剣士の後にメイスが来ることがわかっていれば剣士が邪魔になるように立ち回る。
感覚が鋭くなって未来も二手先まで見えるようになってからはかなり楽になってきた。相手も思うように上手くいかずに苦しんでいるようだ。相手が苦しむ反面こっちはどんどん頭がクリアになっていき、自分が何をすれば良いのか直感的にわかる様な状態になっている。頭の中の無駄なものが次々に削ぎ落とされて相手の一挙一動に全集中と全反応を注げている。これがゾーンというやつなのだろうか。
とても気分がいい。負ける気もしない、体もいつもよりスムーズに動いている気がする。頭と体が完全にリンクしているのが分かる。後は時間の問題だな、ギアを上げて行こう。
「ふぅ、なんとか倒せたな」
最初は思ったよりキツいと思っていたが、俺がより集中するにつれて余裕が生まれてきたな。今まではスキルにほとんど頼ってしまっていたが戦い方、所謂psも磨いて行かないとな。psは時にはスキルをも凌駕するってことが分かったしな。psを鍛えるためにもなんとしてもこのイベントで勝ち上がろう!
ーーースキル【明鏡止水】を獲得しました。
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皆さんが好きな四字熟語はありますか?
教えて欲しいです!自分は……一石二鳥ですかね?笑
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