第57話 シナジー


 またやってしまった。これで四人目だ。なかなかいい感じに着地するのは難しいな。ハーゲンが俺の所有物だとバレたくないという理由だけのために、俺はわざわざミサイルみたくハーゲンから飛び降りてるし、そのまま待機させつつ、相手を倒したら再び召喚することでバレるのを最小限に抑えている。


 まあ最小限とは言っても、消える瞬間や飛び降りる瞬間を見られたら流石に怪しまれるし最悪バレるだろう。でもなかなかこのバトル中に上まで警戒できる余裕のある人はいないだろう。今のところはゼロである。この調子でいないことを祈ろう。


 でも、もうこのミサイル方式も飽きてきたな。飽きるというよりも俺は戦闘がしたいのだ。それなのに、こうも一方的に倒してしまうのは少し味気ない。今回は戦闘を楽しむはずだったんだけどな、まあ、過ぎたことは仕方ない。切り替えて行こう。


 多分、この接敵方法がいけなかったんだな。上手く狙った所に着地できない。どうするべきなのだろうか。


 一つの手段はハーゲンが俺の従魔であることがバレるのを考慮せずに、低空までハーゲンに運んで貰う方法で、もう一つは、もう最初からハーゲンを使わずに探索をして敵を捕捉しだい戦闘を仕掛ける方法だ。


 なるべく手札を晒すべきではないということを考慮すればハーゲンを使わずに探索する方だ。だが、その時のデメリットはもし敵になかなか遭遇しなかった場合、バトルの回数が減ってしまう。索敵という面ではハーゲンを使った方が確実に敵を発見できる。


 いや、やはりハーゲンは温存する方向で行こう。やはり地道に索敵をするしかないな。だが、ただ探すだけというのもやはり先程のデメリットが気になる。そこで俺は気配察知のスキルを使おうと思う。


 今まで気配察知は受動的にしか使っていなかった。例えば移動中にモンスターが近づいてきたら反応するという感じだ。


 だが、今回はそれを能動的に使ってみるのだ。自ら気配を探りにいって、どんなに少しの気配でも感じることが出来ればそこに向かって行くことで接敵確率も上がるだろう。やり方はわからんが試してみる価値はある。


 早速やってみよう。まず気配察知を使用するというイメージを持つ。スキル発動は使用するという意思だけで大丈夫だが効果を増す為に強くイメージする。気持ち的に全身から魔力を発散させるという感じだろうか。魔力をあまり感じたことはないのだが、MPがある以上魔力的なものは存在するだろう。


 ……やはり、流石にこれでは厳しいようだ。何も感じない。だが、まだ諦めない。今度は集中を併用して試してみる。集中を使って気配察知に集中するのだ。別に効果が上がる訳ではないだろうが、何事も集中すれば効果は上がるだろう。


 んー厳しいようだ。まだダメなようだ。だがまだ手はある。瞑想だ。別に瞑想にも効果上昇を促す効果は無いはずだが、精神統一をすることでさらに集中することができるはずだ。完全にメタ思考だがこれくらいはいいだろう、現実を意識しただけだ。


 くそっ、やはりダメなのか……気配察知で気配を感じ取ることは無理なのか?


 ん? いや、何か感じるぞ。非常に微な気配というか脳みそがムズムズする感覚だそれが徐々に移動していく。そしてそれは左前で移動をやめた。これは気配ということで良いのだろうか? だが、何もないよりは可能性が高いだろう。


ーーースキル【気配感知】を獲得しました。


【気配感知】‥周りにいる生物の気配を感知できる。効果範囲は熟練度に応じて大きくなる。


「【気配察知】は【気配感知】に統合されます。」


 そう思って立ち上がろうとした矢先、そんな声が聞こえてきた。


「おぉ!! 遂に来たぞ!」


 俺のやろうとしたことは間違いではなかったようだ! これで安全かつ確実に敵を見つけることができるぞ!


 こっから俺のターンだ!!




 一方その頃、感知された人は、


「うぉ、なんか急にぶるっとしたぜ、一瞬寒気みたいな感じてしまったぜ。これは武者震いってやつだよな?」

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