第56話 二人目の犠牲者


 弓兵にお仕置き完了っと。これでとりあえず敵を排除したんだが、この後はどうすればいいんだ? 立ち回りが全くもって分からんぞ。最後の三人になるまで生き残れば良いわけだからひたすら逃げて隠れてするか?


 いや、流石にそれは面白くないな。普通にそれをしても楽しそうだが今回じゃなくていい。今回は自分の実力を測る為でもあるからな。積極的に人を探して勝負を挑んでいこう!


 でも、探すとなると結構大変だな。この戦闘フィールドはかなり広大なマップが使われているから探すのだけでも大変そうだ。


 ん、そういえば、何か忘れているような……? 俺がいつも探したり移動する時って歩いて探すというよりは……


「ハーゲンっ!!」


 そうだ! ハーゲンだ! あいつってこのイベントに来れるのか? 流石にモンスター持ち込むのは有利すぎるか? いや、でもテイマーみたいなモンスターに戦わせるタイプのプレイヤーもいるよな? ってことは使えるのか?


「って、来た!」


 俺が使えるのか使えないのか悩んでる間にお前は急に現れやがって。その、ん? 俺なんかした? みたいな顔やめろ! ただでさえ禿げてるのにそんなムカつく顔されたらイラつくだろ! まあ、今まで散々お世話になってきたからな、今回も頼りにしてるぜ!



 上からはやっぱりよく見えるなー。それに上から見られてるとは流石に誰も思っていないのか、プレイヤーは周囲の警戒しかしていない様子だ。それに見られることはあっても、ハーゲンはかなり大きくて俺の姿が隠れることもあってか、すぐに意識から外れている。ただの風景としてしか見られていないのだろうか? それはそれで辛いな……


 ある程度観察も終わった。まだまだかなりの人数残っているようだ。草原といってもこうして上からみると所々岩が剥き出しになってる所があったり、平坦でない所も結構あったりするので、みんながみんな即接敵、即開戦というわけではなさそうだ。まあ、そうは言っても遮蔽物が無いこのフィールドだから色んな所でどんぱちやってる。


 んー。今戦ってる所に乱入して漁夫の利作戦で行ってもいいんだが、流石にそれはどうなんだって思うから、一人でこそこそしてる奴を積極的に倒しに行こう! なんかずっと隠れていて、気づいたら決勝に進んでました! みたいなのは嫌だからな。警戒していない死角から一気に攻めるぜ!



 お、あそこに良い感じの人がいる。男の奴だな。武器は……なんだろう、良く見えない。少なくとも、弓やライフルと言った狙撃系の武器には見えない。まあ、関係ないか。相手の所に降りて速攻で倒すだけだ。


 今、ちょうど真上にいる。目標は完全にうつ伏せになって匍匐前進の構えで周囲を警戒してる様子。上空には全く意識を向ける素振りもない。まあ、俺が逆の立場でも上は警戒しないな。だから、しょうがないんだ、許してくれ。


 これ、降りるの難しいな。別に飛び降りることに対しては転落死の時に散々やったから怖くはないんだが、相手の付近にいい感じに降りないといけない。出来れば相手の後ろ側に降りたいな。まあうだうだしててもしょうがない。行こう!


 あーパラシュートを開く前のスカイダイビングって一番楽しそうだよなー。空中でくるくるバク転とかしてさー。流石にそんな高度はないからただ落ちるだけだけど、一応の為集中を発動させて万全を期して着陸する。まるで自分がミサイルにでもなった気分だ。


 よし! いい感じだ! このままいけばちょうどよく相手の後方に着地できるはずだ! ってなんか少し近くないか? まあ大丈夫かとりあえず着地さえできれば後は倒すだけだからな。


 ズドーーーン!!


 よし、着地成功! HPは安定の1だけど大丈夫だな。それより敵は? やばい、めちゃくちゃ砂埃が立って周りがよく見えないぞ! 敵はどこにいる!


 ようやく、砂埃が晴れてきたな。あれ? 敵がいない。どこに行ったんだ? まさか逃げた? この短時間に? でも、どの方角を見ても見当たらない。砂埃が立っていたのはそんなに長くないぞ、その短い間に逃げたというのか?


 ん? あ、潰れてる。綺麗に頭だけがない。まだポリゴンになってないってことはまだ生きてるのか? この状態で? とりあえずどくか。


 どいてみると、すぐさまポリゴンとなって消えていった。体が接触してる状態ではポリゴンにはならないってことか? まあ、いいや倒せたからな。でも、普通に戦いたかったな。まあ、まだ人いるだろうし次探そう。


 ❇︎


ーーーとある男性プレイヤー


 やばいやばいやばい。イベントだって浮かれて参加したのはいいが、武器を間違えてしまった! 


 最近、面白半分でヌンチャクを作って憧れのカンフー映画を真似しながらモンスターを倒したりして遊んでたんだか、このヌンチャクを買うために全て他の武器を売ってしまったんだ。


 クッソーもうちょっと早くこのイベントの存在を知っておけばこんなことにならずに済んだのに!


 これはまずい。イベントは誰にでも見られてしまう。いい年したおっさんがヌンチャク使ってるのを見られるなんて恥ずかしすぎるぞ! しかもアバターは好青年イケメンなのに! カンフーに憧れてる時点で世代バレるし、もう詰んだな。


 いや、待てよ? このイベントは戦闘シーンだけを抜き出して放送されるって言ってたな? それならずっと隠れまくって逃げまくったら一度も映らずに決勝に進める?


 自分で自分を攻撃するのは流石に嫌だし、それ見られたらそれこそ一巻の終わりだしこの作戦で行こう。残り三人になった時点で武器をアイテムボックスにしまって倒してもらおう。


よし、こうやってずっと伏せとけばなかなか見つからにくいはず。このまま乗り切ってや


「グシャ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る