第51話 初心
欲しかったスキルを手に入れたんだが、ここで問題なのがイベントまでに残された時間だ。今回、初めてのイベント参加ということでかなりワクワクしているし、良い成績も残したい。それに、上位入賞者には賞金や景品もあるらしいからな。手に入れない手は無い。
そう、その為に俺は強くならないといけないんだが、生憎時間がないのだ。そこでこのスキルが生きてくる。貫通は無効化スキルを貫通してダメージを与えられるスキルだ。それも任意で発動できる。だからそれを使って超特急で死ななければならない。
ここからどれだけ死ねるかが今回のイベントの鍵になってくる。イベントまでは何と残り三日しかない。急いで死ななければ……
取り敢えず今から死ぬ方法は……焼死です! 手っ取り早く死ぬ、かつ移動する時間も短縮したい! ということで焼け死にたいと思います!
手元には火打石があるのでこれを使って死にます。あまり人目があっても嫌だから、場所はまえ解体したアジトら辺にきている。では、死のう。
「あぢっ! あちちちち」
うん、この感じ久しぶりだな。最近は依頼が多かったから強くなる為の死に戻りはあまりしてなかったな。やっぱり定期的にしていかないと、体が鈍くなってしまうな。忘れるのは良くない。現実世界は常に死と隣合わせなんだということを忘れないためにも、イベント後も継続的に続けて行きたい。
……それにしても熱すぎないか? あ、そういえば俺、炎の使い手みたいな称号持ってたな。あれの所為なのか、それとも普通に久しぶりすぎて体が驚いているだけなのか、取り敢えず、百は死ぬか。
ーーー一時間後、
うぅ、キツいな。今までは無効化スキルを獲得したら終わることができる、というゴールがあったからまだ良かったんだが、今はいわばズルをして死んでいるみたいなものだから、スキルをゲットすることが出来ない。つまり、自分との戦いなのだ。もう、辞めたい、もうこれ以上焼かれたくない、という気持ちに逆らって火をつけ続けるということで、メンタル面も強化する事ができる。
それを乗り越えられたらもう後は作業なんだけどな。現実で死にたがってた時の方がすぐ慣れていた気がする。今はもうちょっとだけ生きようとしているだけ、死に対して嫌がっているのかもしれない。
始まりを思い出さなければ。初心忘るべからずとは正にこのことだな。やっぱり人間は弱い生き物なんだな。時間が経てば忘れてしまう、思いも風化してしまう。それを忘れない為にも俺は死ななければ。
ーーー更に一時間後、
ーーー称号《爆炎の支配者》
称号《無慈悲なる者》を獲得しました。
《爆炎の支配者》‥炎によって、人を一定数以上倒す。炎によるダメージに強補正。【爆炎魔法】を取得する。
《無慈悲なる者》‥心を殺して、人を一定数以上倒す。相手の恐怖心に応じて攻撃力上昇。
お! なんかゲットしたぞ! これでもう、一旦終わろう! おー、中々強いじゃないか! でも、悲しいのが、人を一定数以上倒すっていうの全部俺なんだよな……うん。
おかしいだろ! 特に無慈悲なる者の方! いやまあ、たしかにメンタル面の強化だーとか言ってたけど、あれ、半分ふざけてるからね? なんか理由付けでもしないとやってらんねーから言ってただけなのに……まあ貰えるもんは貰っとくぜ。
ってか、爆炎の方もそれを言うと、おかしいよな。そもそも、この称号って恐らく火魔法? 炎魔法? かなんかで倒しまくったら貰えるやつだろ、絶対。俺火打石だぜ? もらっていいの? まあ、くれたら返せって言われても返さないんだが。
なんか色々飛び越えて爆炎魔法ゲットしてしまったな。まあ、強そうだからいいけどさ、それにしても、称号とかゲットできて良かったな。ゲットできなきゃイベントまでずっと火打石で死んでた所だったな。
ちょっと待てよ? 無慈悲の称号にある恐怖心ってどうやって与えられるんだ? なんかいい感じに相手を怖がらせる手段を考えないとな……
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