第48話 お支払い


 ふぅ、死んでしまった。俺は今第二の街にいる。死に戻ったのだ。お金をギルドに預けて置いて正解だったな、これでデスペナで持っていかれたらたまったもんじゃない。確かデスペナはステータスの半日半減と、所持金の三割が失われる、だったな。


 いやー危ない危ない。龍の体だったら確かに水圧には耐えられるが、流石に生身じゃきついな。何も考えてなかったぜ。でも、偶然死ぬ方法見つけることができたのはラッキーだったな。龍化して、海底近くまで行って解除しないといけないから結構手間はかかるが、死ぬのは一瞬だ。時間がある時に気が向いたらしよう。


 それよりも、これで目標金額が貯まったはずだ! さっさと報告して、報酬もらって、お金も引き落として払いに行こう! これでやっと俺の借金生活? が終わるぜ!



 よし、依頼達成を報告してきた。報酬ももらってお金も引き落としたんだが、預けていた手数料で一万もっていかれたから、うん、少し足りないな。どこかで何か売って足りない分は補完しよう。


 俺が売れる物といえば、モンスターの素材なんだが、素材を売る場所は暗殺ギルドには無くて、冒険者ギルドに行かないといけないらしい。初めて冒険者ギルドに行くのが素材売りって……まあ、しょーがないな、気を取り直して行こう。


「うわっ」


 冒険者ギルドに入るとそこにはもう沢山の人がいた。入る前からかなりの人通りで薄々勘付いていたんだが、それもここまでとは思わなかった。正直びっくりしてる。プレイヤーが結構な数いたのだ。


 うちのギルドは建物内に人はそんなに居ないし、たまにいたとしても、依頼を受けたらすぐにどこかへ行ってしまう。常にいるのは受付の人くらいだ。それに比べてここはもう常に人がいる。入っては抜け、入っては抜けを繰り返して常に人が溢れている状態だ。それもほとんどがプレイヤーだ。ちなみに、うちのギルドではプレイヤーを見たことは一度もない。


 プレイヤーは頭上に名前が白字で表示されるから一目瞭然だ。ちなみにNPCは緑で表示されている。


 入り口で立ち止まっていると、かなり人の迷惑になっていた様だ。特に何か言われたわけではないが邪魔なんだよオーラがすごい出てた。うん、日本人だから察したけど、なんか言ってくれればどくよ? そりゃ。


 まあ、そんな感じで初めての冒険者ギルドに入ったんだが、目的は素材を売ることだ。さっそく買取してもらおう。


 買取は専用カウンターでしてもらう。アイテムボックスを見ると、雪山での猿の素材と、密林での虎の素材が上の方にあったのでどっちを売ろうか迷った末に、猿の素材を売った。猿の方が弱かったからな、そっちの方が必要性は低いと判断したのだ。


 だが、買取金額は思ったより高くついて三十万程手に入れる事ができた。なんでもあの猿はとても珍しくて中々市場に出回らないのに加えて毛並みがとても良くて需要は高いらしい。まあ、俺には必要ないから売って正解だったようだ。


 よし、これで金は揃ったことだし、さっさと払いに行こう。


「ハーゲーンー!!」


 そういえば、ハーゲンの休暇から会ってなかったが、どうだったのだろうか? 何も聞いていないが機嫌は良さそうなのでいいだろう。早速連れて行ってもらおう。



 ただ今ハーゲンに連れて来てもらって始まりの街の上空にいる。あの二つの建物は似ているから上空では分かりづらい。まあどちらにも用はあるので適当に片方に行こう。


 地上に降り立つとそこは鍛冶屋だった。中に入ると、俺を覚えててくれたようで、「遂に来たか」なんて言われた。まあ、結構間が空いたからな、向こうも待ち遠しかったんだろう。お金が。


「お久しぶりです! だいぶ待たせてしまったのですが、これが代金です。素晴らしい武器をありがとうございました」


 と軽い挨拶と共にお金を返すと、


「(おー! やっとお金が返ってきたわい。これで今日は旨い酒が飲めるのう。楽しみじゃわい。)うむ、しかと受け取った」


 よし、これで取り敢えずの目的は達成した。だが、実はもう一つここには用があるのだ。それは、俺の防具作成だ。


「すみません。お金を払い終わったばかりで申し訳ないのですが、実は防具を作ってもらいたいんですけど……」


「な、なんじゃと!?」


「この、虎の素材で全身の防具を作ってもらいたいんですが……お金は完成品をもらう時には必ず用意致しますので……お願いします!」


「(はい? こ、これはまた凄い素材を持ってきよったわい。双頭虎じゃと? これはまた骨が折れるのう……って、今日もまた酒が飲めなくなるではないか! いや、今日くらいはいけるかの?)いつまでにじゃ?」


「えーと出来るだけ早くですかね? どのくらいで完成するのですか?」


「(んー。出来るだけ早くか。そりゃ早くしようと思えば二週間くらいで出来るじゃろうが、儂も休みたいし、今日は大金で酒も飲みたいのじゃ、ちょいと時間を多めにもらうかの。それに、こんなやつからポンポン注文されたらかなわんわい。)これくらいになると一ヶ月くらいはかかるの」


「そ、そうですかー。ではお願いします」


 思ったより、時間はかかるようだ。まあ武器もそのくらいかかったし、仕方ないな。ただ、イベントに間に合わないのはちょっと痛いな……

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