第46話 龍の姿


 え? あっ、はい。俺は龍といえば勝手に、何となく西洋風のいかつい翼と足と腕があるドラゴンをイメージしてたんだが、俺が変化した龍の姿はどちらかというと東洋風の細長い体に短い手足、と言う感じの体だ。


 しかし、緑色のあの日本昔話に出てくるような感じとも少し違う気がする。鱗は全体的に青くて一枚一枚が大きくてゴツゴツしている。


 あ、この感じどっかで見たことあると思ったらこの鱗、リヴァイアサンととても似ている。もしかしなくても、この龍化は自分が倒した龍の姿になれるというやつなのか? それなら俺がこの姿になったのも納得だ。


 ということは、待てよ? 俺は今あのリヴァイアサンになってるってことだよな? という事は体もそうだし、顔もそうってことだよな?まじかー、俺今あんなにゴツいのかー。


 リヴァイアサンの顔はかっこいいより怖いって感じだよな、顔デカいし生物感がないんだよなー。どうせなれもっとかっこいい方が良かったけど、まあ仕方ない。別に不細工というわけでもないし、好きな人は好きだと思う。


 よし、取り敢えず動作確認をしよう。手は……一応あるっぽいな。でもなんというか変な感覚だ。気をつけてした状態で、手首を全力で曲げている感じだ。まるでペンギンみたいな感覚だろうか? こちら側からするとそんな感じだな。


 足は……もう完全に一体化してるなこれは、寝袋に入った状態で水泳のフィンを付けてる感じと言えばわかるだろうか? あぁ、人魚ってこんな感じなのか、と思わせるような感覚だ。


 それになんといっても足が長い! 足長なのか胴長なのかわからないが、長すぎるだろう。それに足なのか尻尾なのかも定かじゃない。


 あれ? ちょっと待てよ? 俺は西洋風のあのドラゴンを想像してたから、あのタコを倒せると思ってたんだが、まさかのリヴァイアサンだったからな、どうやって攻撃すれば良いのか?


 腕? 手? を見てみると一応爪みたいなものはあるが、なんかヒレみたいなものも付いてるし、足に至ってはもう見えません遠くて見えません。人魚の尻尾みたいな感じだろうし攻撃は出来ないだろう。


 そうなると、手で攻撃するしか無いのか? いや、でも目から手までの距離がありすぎて感覚がわからねえぞ? 試しに近くにいる魚を試しにつかもうとしてもまるで取れるきがしない。UFOキャッチャーを超遠目で見ながらしてるみたいになる。


 ってことは手も無理か……最終手段はもう口だな。口ならいつもと大して(手と足ほどは)変わらないだろうかはいけるはずだ。ただ、平面な人間の顔と違って、リヴァイアサンは鼻がとても出ていて、その下にすぐ口がある。嘴とも少し違うがフォルム的にいえばそんな感じだな。だからそこだけは注意だな。


 でも、懸念事項が噛みつかないといけないことなんだよなー。あのタコに噛みつかないといけない。なんなら食べないといけないだろう。生態系としてはこっちの方が上だろうし、実際捕食するのはリヴァイアサンの方だろう。


 だが、素直に嫌悪感がある。普通のタコならまだしもあのまずそうなクラーケンの踊り食いならぬ暴れ食いだからな。心底やりたくないが、やるしかない。覚悟を決めていくしかないな。どの道この方法しかとるべき手段がない。早速行こう。


 お! 泳ぎ始めると流石海龍? とても速い! 人間の俺とは比べものにならない速度が出ている。ちょっと楽しい。でもその分一瞬で着いた。一旦停止して、間合いをはかる。よし、いくぞ!


 そう思ってタコの頭を狙ってトップスピードで行く。当然足が邪魔してくるが、龍の力は強い。どんなに巻きつかれてもいとも容易く振り解いてしまう。それほど龍が速く力強いのだ。


 そうして、俺の巨大な体に何本も巻きつかれながらもタコの頭に到達すると、一気に噛みつき、切り離して、通り過ぎる。これまでで数秒と経っていない。


 やってしまった。とうとう、やってしまった。あのまずそうなタコを食べてしまった。もう毒とか入ってそうな見た目だし、思わず吐き出しそうになったが、


「グァウ? ガウガウ!? (あれ? 意外といける? ってか寧ろ旨い!?)」


 タコの味、それは絶品だった。とても新鮮で噛めば噛むほど旨味が溢れ出てくる。俺は普段寿司を食う時にタコなんて頼んだことないんだが、あ、スーパーで買ったやつに入ってる時はしっかり食べるぞ? このタコめちゃくちゃ旨い。やみつきになってしまうほどだ。ってかもうハマってしまった。


 先程の攻撃では頭部を食べたから今度は足からいこう。足は切っても復活するしな、腹が膨れるまでタコパといこうじゃないか!

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