第44話 南の港街


 港街に到着した。規模はそんなに大きくないがかなり栄えている。活気で溢れていて雰囲気がとても良い。海に面しているから色んな文化が混じっているのだろう。色んな肌の人がいるし、服装もバラバラだ。そういえば、海の向こうには別の大陸があるのだろうか? あったとしていけるのだろうか? まだ見ぬ絶景が多くありそうだ。いける機会があればいつか行ってみたいな。


 よし、ここに来た目的は二つある。一つは依頼である、クラーケンの討伐。そしてもう一つはハーゲンの羽休めだ。俺が戦っている時は自由にしてもらう。


 ハーゲンにしたい事を尋ねると魚が食べたいみたいな感情が伝わってきた。そういえば俺はハーゲンに餌をやった事も無かったから、気にしていなかったが、ハーゲンも鳥なんだから魚が好きなんだろう。腹一杯に食べて欲しい。


 ちょっと市場にでも行って魚を買ってあげよう。いくら俺が戦っている間魚を食べられるといっても、狩をしなければならないし、狩をする以上満足するだけたべられるかわからんからな、あと食べる所も見てみたいからな。お金は殆ど預けてきたが一応一万ほどは持ってきている。そこそこ食べさせられるだろう。


 一緒に市場に行って、ハーゲンが反応したものを買おうと思ったが、流石にハーゲンはデカすぎるため邪魔になる。だから俺が一人で見て回っている。どんな魚が好きなんだろうか、青魚か白身魚のどちらが好きかだけでも分かれば楽だったんだが、生憎ハーゲンに言ってみてもよくわからないようだった。


 まあ、鳥は食べる時に一々魚の種類を気にしているわけじゃないだろうからな。青魚も白身魚も一通り買って気に入ったものがあれば追加で買ってやろう。


 買ってきた。早速少し人気が少ない所で食べさせてみるとなんとも嬉しそうにしていた。どの魚も気持ちいいくらいに美味しそうに食べてくれるし、量もかなり食べた。一応の為に多めに買っておいて正解だったな。


 特にハーゲンの反応がよかったのは、鯛だ。鯛を好きになるなんて少しお上品なんだな。てっきり鮭とかかと思ってたぜ。依頼終わったらまた鯛を買ってあげよう。



 よし、これでハーゲンを喜ばせることも出来たし、俺は依頼に向かうか。さっさと終わらせてお金も払い切りたいしな。早めに終わったらハーゲンの時間も出来るだろうし、とっとと終わらせよう。


 今回討伐予定のクラーケンは普段は水中にいて、船がクラーケンの縄張りを通ると襲ってくるらしい。かなり巨大で、海上で戦うのはとても苦戦するらしい。まあ、そりゃそーか。


 だが、まあ俺には策がある。もっと効率よく倒せるだろう。まず俺は船を使わない。ハーゲンが居れば海上のクラーケンの縄張りまですぐにいける。


 それに加えて俺のスキル潜水を使えば、なんとクラーケンとまさかの水中戦闘が可能になるというわけだ。


 本来なら、襲ってくるまで待ったり、岸の方まで誘い込んだりしないといけないだろうが、直接会いにいって直接戦うのだ。一番手っ取り早いだろう。


 そういう訳でハーゲンに連れてきてもらった。ここからはハーゲンの自由時間だから、好きな場所に行ったり、魚を食べたり、休んだりと、何でも好きなことをしていいと言っている。


 ここからは俺一人で戦う。初めての水中戦だからな。どんな感じなのだろうか楽しみだ。少しワクワクしている。よし、いくか!


 海の中に入ると遠くにクラーケンが見えた。クラーケンの真上まで行くとハーゲンごとやられてしまうかもしれないので、それを配慮した結果少し遠い場所で海に飛び込んだ。


 俺は現実世界で泳ぎは得意でも不得意でもなかった。クロール、平泳ぎはできるが特段早いわけでもなく、バタフライ等は出来なかった。そのため、そんなに地上ほど高速には移動できないが、向こうが気づけば向こうからやってくるだろう。


 なんて事を考えながら海に飛び込んでみると、そこに広がる海はとても綺麗だった。


 それもそうだろう。現実のようにゴミも環境問題もない。全く汚染されていないそのまんまの海だ。こんなものを見れるとは流石だな。小魚もたくさん泳いでいるし、何より水が綺麗だ。これを現実の世界で見ようと思っても中々厳しいだろう。少なくとも俺には絶対無理だ。


 そうして海に見惚れながら、海の中をゆったり泳いでいると、ふと足に変な違和感を感じた。


 クラーケンに足を掴まれていたのだった。

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