第35話 凍死


 昨日あの後ランクをCに上げてもらってこの街に来てからの最初の目的は達成した。


 次の目的は新しい死に方で死にまくること、だな。もっと強くなってもっと強いモンスターを倒せばより沢山のお金を貰えるだろうからな。当面の目標はお金稼ぎの為のモンスター狩りの為の死ぬことだな。


 よし、では早速死のう。そこで、問題なのがどう死ぬかなんだが、先日倒した虎なら余裕で俺を何度も倒してくれるだろうが生憎自分の手で倒してしまった。ああいうモンスターはもう一度出現するのだろうか? もし、出現して依頼なんかで目撃したら潔く死にいこう。


 まあ、叶わぬ望みは置いといて、密林地帯はいえば森みたいなもんだ。生態系とかは全然違ってくるんだろうが一般人からしたら森も密林もそんなに違いはない。森は始まりの街で散々死んだ場所だ。俺としては魅力も感じないし、死ねる場所があるのか怪しい。


 そこで俺はギルドの受付の小柄なおっちゃんにこの街周辺の環境を聞いてみた所、この街は山で囲まれているらしい。と言っても全方角という訳でもなく、始まりの街に続いてている南、密林方面の西、を除く北から東にかけて山脈地帯が広がっているそうだ。


 これは囲まれているという表現が正しいのか分からないが早速行ってみよう。山といえばあれがあるはずだからな。


「ハーゲン!!」


 街中でするのは目立つだろうが、人通りの少ない路地裏で召喚して、一気に上空まで飛んでもらった。非常に便利だな、ハーゲンは。よし山脈地帯まで一気に向かおう。


 山の麓に到着した。かなりスケールが大きく、山頂も高いから囲まれているといっても過言では無いかもしれない。とても雄大で威厳がある。そして中腹までハーゲンに飛んでもらう。


 ここら辺がハーゲンの活動限界らしい。高度的に無理なのか、温度的に無理なのか仕様で無理なのかは分からないがここでハーゲンの仕事は終了だ。ここからは俺の番だな。


 目的地はもうすぐだ。ダッシュして向かう。別にそんな急がなくても良いんだろうが少しでも多く死んでた方がステータス上がるからな。高いに越したことはないだろう。そして登り始めて数分経ってようやく見え始めた、それは……雪山だった。


 まあ、そうだろって声は受け付けない。山なら上に行くほど寒くなるからな、山があるって聞いた時点で最初はここで逝こうと思ってたんだ。現実の地球でも赤道付近の山は雪が積もるからな。別段暑くもないここなら確実に雪が積もっていると思っていたが、本当に積もっててよかった。


 山、雪、死ときたらもう分かるだろう。そう凍死だ。炎で焼け死んだことはあるが寒さで死ぬとはどんな感じなんだろうか。気持ち的に言うと餓死に近いきもするがどうなんだろか。まあ百聞は一見にしかずというしな。早速逝こう。


 装備を全部外すと、インナー姿になる。ゲームではありがちな仕様だな。まあとりあえずインナー姿になる。関係あるかどうかわからないが寒い方がいいだろう。インナー姿でもかなり寒い。そして、俺は思いっきり雪の中へダイブした。


「冷たっ!」


 インナーはお腹が出ていない、一つなぎになっているタイプだ。その為手足は直に雪にふれている。インナーを着ている部分も冷たいが直は全然違う。めちゃくちゃ冷たい。もはや感覚がなくなっている。感覚があるのは腕や足の根本部分から中心にかけてだからもはや手足があるのかすら怪しく感じる程だ。手足がない人達はこのような感じなのだろうか? 意識できる部分がそこからなので近いだろうとは思う。


 それにしても、大の字でうつ伏せに雪の中にいるかもう外からは何も見えないから、他人から怪しく思われることもないだろう。こんな所に人が沢山いるとも思えないが。


 餓死の時とやはり似てるな。死因は外的要因と内的要因で全く異なるが、時間がかかる点や、何もできない点などが似ている。それに死のうとしてる間に考え事をしてしまうこととかもな。


 考える事の中で今までは死についてが多かったが最近はそれに伴って生についてもよく考えるようになった。死にまくることによってより生が強調されるようになったという感じだろうか。


 人生の目的や意味とか答えの無い問題が次から次へと湧いてくる。死ぬ必要が無くなり、死ぬことが怖くなくなった今、何故生きるのかが自分の中で問題になってきたのだろう。


 このゲームで死んでいく中でその答えも見つけられたら良いな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る