第32話 ホワイトツヴァイタイガー


「俺が勧める依頼を受けないか?」


 え? 俺今すぐ死にに行きたいんですけど……なんで?


「悪い、悪い。驚かせてしまったな。こんなこと普通はねえからな。お前はここにランクを上げに来たんだろ? 次はDランクだ。だが、前の街ではかなり依頼をこなしてくれたから後一つ依頼を受ければちょうどCランクに飛び級出来そうなんだ。わざわざ二回更新するのもお互い面倒だろ? どうだ、無理にとは言わないがお前さんにも益のある話だと思うがよ。どうだ、受けてみないか?」


 なるほど、そういうことか。単に業務を減らしたいんだな。まあ確かにDに上がった後すぐにCに上がるくらいならまとめてやった方が楽だな。時間も節約出来るしな。


 まあ、一つくらいなら受けてもいいか。報酬金だけ後でまとめてもらうことってできるのかな? それができたら報酬も無駄にならずに済む。それも最後にまとめたほうが楽だしね。これでいいか。


「そういうことなら、受けてもいいですが、他にも依頼を受けるつもりなのでまとめて報酬を受け取ることはできますか?」


「ん? 後でまとめてってことか? 別にいいけどなんでだ? まあいいか。それより受けるってことでいいのか?」


「はい。依頼を受けたいと思います」


「おぉ、そうか助かるな。なら依頼の説明をする。場所はこの街の西、密林地帯だ。そこの外縁部にある集落にモンスターが現れてな。住民や作物が被害を受けているんだ。そのモンスターを討伐してほしい。

 モンスターについてだが、名前はホワイトツヴァイタイガーという。かなり凶悪で見た目も恐ろしいから住民がパニックになり、避難するのも一苦労な状況だ。一刻でもはやい討伐を望んでいる。頼むぞ」


 へーかなり深刻な状況なんだな。それにしてもこの街の西には密林があってそこにいるホワイトタイガーを倒せばいいと事だな。倒せるかわからんが、倒せるまでやれば良いだろう。恐ろしい見た目でパニックになるほどなんだろ? どんな顔してるんだろう。では早速行こう。村人も危険らしいからな。


 街の門をでて少しするとそこには密林が広がっていた。ちょうど境界線あたりには集落があるな。今は襲われていないみたいだが、どこにいるのだろうか。そもそも人はまだ居るのか?


 集落の家屋に入るとそこには影に隠れてじっとしている住人がいた。どうやら虎と勘違いされたようだ。


「すみません。ギルドから派遣された者なんですが、今モンスターがどこに居るか分かりますか?」


「……」


 恐怖の余り言葉も出せないようだ。まあしょうがないか。いつ殺されるかわかんない状況で日々を過ごすなんてたまったもんじゃないだろう。自分から死に逝って蘇るほうがよっぽどましだ。


 とりあえず住人があてにならないことが判明したので、自力で探すことにする。今は運良く集落は襲われていないので恐らくこの密林の中だろう。ハーゲンを使いたいのだが木が生茂りすぎて上からじゃ葉っぱしか見えないだろう。諦めて足でいくしかない。



 至る所に木々が傷つけられたり、なぎ倒されていたりする。これも虎の仕業だろうか。そうならばこれを辿れば虎に辿り着けるかもしれないな。捜索を続けよう。


 モンスターを引き寄せるスキルとかアイテムとかないのか? それがあれば一発で見つけられそうなんだが……またあの爺さんの所に行った時聞いてみるか。


 そうして進んでいくと、開けた場所に出た。


「お! ここか? ……え!?」


 そこには虎が眠っていた。しかし、虎と言うには少し歪な姿だった。ホワイトタイガーであるからもちろん毛並みが白い。だが驚くべきはそこではなく、なんと頭が二つあるのだ。


〈Lv.92 ホワイトツヴァイタイガー〉

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