第29話 スキル


 目の前にあるのはいかにもって感じのごっつい巻き物。これに書いてあるのは相当ヤバいものなんだな、って一瞬で理解できてしまう見た目をしている。これは一体なんだ?俺が望む物って爺さんは言ったからな。明らかに武器ではないよな、なんなんだろう。


「これはなんなんですか? それとお値段はおいくら程になるんですか?」


「(これはなんだと聞きおったぞこやつ、まあこれがスキルを覚えることのできる秘伝書だということは流石に知っておろう。巷では秘伝書自体珍しいものじゃがの。

 ってことはこれの中身か……もしやこれがここの最高品じゃないってことがばれておる? いやまさか……だが本当にそうだとしたら危ういな……だがあれは代々受け継がれてきた伝統ある家宝のようなもの。流石においそれと渡すわけにはいかない。

 どうにかこれで勘弁して貰えんかのー……)

すまん、どうかこれで勘弁してくれ……頼む」


 ん? どうしてこのおじさんはこんなにも深刻そうな感じで頼んでくるの? ってか俺の質問に何も答えてくれてないんだけど、ってかそもそもこれ俺が頼んだやつじゃないし……どうしよう。取り敢えず、値段だけでも。


「ん、よく分かりませんが、それよりこれの中身と値段を教えてくれませんか?」


「(ふぅ……儂の早とちりやったかもしれんのう。普通に人違いの可能性もあるしな。よかったわい、よかったわい。

 それにしてもなんでこれの中身と値段が気になるんじゃろか? まあ、いいかのう)

 これはスキル、乾坤一擲というものじゃ。効果は名前の通り、自分の体力を1にする代わりに次の攻撃の威力をとてつもなく上昇させる、とても強大だが使いどころが難しいクセのあるスキルじゃな。値段は五十万ほどじゃのう」


 は? 五十万!? やばいやばいやばい、流石に買えねー。だって、俺の所持金さっき貰った報酬の二万ちょっとだけだぞ? 約二十五倍はかなりやばいだろ、でもあのスキルかなり俺と相性が良いスキルなんだよなー。どうにか待って貰ったり出来ないかな? ここに置いておくだけでも……


「すみません、今手持ちが少なくてですね、その商品がどうしても魅力的なもので約一ヶ月程待って貰えませんかね? 勿論その間ここに置いて貰って構いませんから、取り置きだけでもして頂けないでしょうか」


「(ほぅ、普通にこのスキルが欲しいと。それにこの値段を一ヶ月ちょっとあれば余裕で用意できると。そうか……この男見てくれはひょろっちぃが、よくみるとかなりのやり手だ。儂くらいになると一目見ただけでわかる。

 そんな奴がこれを欲しいとなると、どういう風に使うのか気になるし、ここで気に入って貰えば後々良い商売もできるだろう。ここは少し一肌脱ぐかのう)

 それならば、このスキル持って行ってもいいぞ。値段はお主が言った通り一ヶ月後でいい。そのかわりといっちゃなんだが、これからもここのお店をご贔屓にしてもらいたいのう。それで良ければ持っていくがいい」


 え!? この人めっちゃいい人じゃん! こんなに良いスキルがあるならこれこらも全然行くし、一ヶ月後なら余裕で貯まるでしょ! ここはお言葉に甘えましょう!


「本当ですか!? 有り難う御座います! これからも是非是非よろしくお願いします!」


 いやーいいね。いい買い物したわー。では早速、これ、巻物を開けばいいのか?


ーーースキル【乾坤一擲】を獲得しました。


【乾坤一擲】‥自分の体力を残り1にして、次の攻撃の威力を超大幅に上昇させる。一日に一度のみ使用可能。


 おおー!良いスキルゲットしたぜー。このスキルは俺のゴミHPと自動回復コンボとめちゃくちゃ相性がいいんだよな。実質ほぼノーリスクで使えるようなもんだからな。いや、あの爺さんには感謝だぜ。一ヶ月後しっかり払って、また良いのを買おう。


 しかし、お金さえあれば良いスキル手に入るんだなー。これをゲットできて良かったぜ。他のプレイヤーはお金でスキルを買ったりしてるのかな? 俺は今まで一度もしたことなかったからな、お金無かったし。そう考えると、みんな俺よりたくさんスキルを持ってそうだな。俺も俺なりに頑張るしかねーな。


 よし、そろそろ次の街に行くか!って


「あ、武器……」


 ってことは余裕であのお店間違えてたんだな。なんかもう色々忘れすぎてたぜ。あのごつい巻物が悪いだよな。そうだそうだ。


 よし、今度こそ鍛治屋いこう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る